2015年9月24日木曜日

“Happy Birthday to You” にcopyrightなし




誕生日のたびに歌われる歴史上最も有名な “Happy Birthday” song。この元歌は“Good Morning To All.” この歌に copyright(著作権、版権)を主張してきた Warner/Chappell に対し、米ロサンゼルスの連邦地裁は、版権所有に基づく課金の権利を退ける判決を下した。

ロサンゼルス・タイムス(9月22日付)は “All the 'Happy Birthday' song copyright claims are invalid, federal judge rules”(すべてのハッピー・バースデー・ソングの版権請求は無効、連邦裁判事裁定)と報じた。


The story began in 1893, with a Kentucky schoolteacher and her older sister. Patty Smith Hill and Mildred J. Hill wrote the song for Patty’s kindergarten students, titling it “Good Morning To All.” The original lyrics Patty wrote were: “Good morning to you / Good morning to you / Good morning, dear children / Good morning to all.”(この話は1893年、ケンタッキーの学校教師とその姉から始まった。パティ・スミス・ヒルとミルドレッド・J・ヒルが、パティの幼稚園の生徒のために、“Good Morning To All”という題で歌を書いたのだ。パティが書いた歌詞は、“Good morning to you / Good morning to you / Good morning, dear children / Good morning to all.”

The sisters published the song in a book called “Song Stories for the Kindergarten,” and assigned the copyright to their publisher, Clayton F. Summy Co., in exchange for a cut of the sales.(姉妹は『幼稚園のための歌の話』という本の中で歌を出版し、版権を売上の一部との交換で、Clayton F. Summy Co. に委ねた)

ところが、Warner/Chappell が 1988年に Clayton F. Summy Co. の後継者の Birch Tree Group を買収し、この歌の権利も手に入れたとして訴訟に及んだというわけ。

Warner and the plaintiffs both agreed that the melody of the familiar song, first written as "Good Morning To All," had entered the public domain decades ago. But Warner claimed it still owned the rights to the "Happy Birthday" lyrics.(ワーナーと原告の双方は、最初に "Good Morning To All” として書かれた、なじみ深い歌のメロディーは、すでに何十年もまえに公有に属していると認めている。しかし、ワーナーは『ハッピー・バースデー』の歌詞の権利は所有している、と主張した)

だが、この歌詞を書いたのは、あの姉妹なのか誰なのかは、わからない、という。


これが現代の著作権ビジネスの深層である。

2015年9月17日木曜日

It is what it is. - 流行する「仕方がない」


“It is what it is.”は、簡単に言えば、フランス語の決まり文句の “C'est la vie.”に相当する。「それが人生というもんだ」(That is life.) が原義で、「それが現実だ」(That’s just the way things are, like it or not.)とか「仕方がない」(There is nothing that can be done about it.)とか、大体そんな意味で使われる文句と同じである。

Urban Dictionary にはこう出ている。

A) A phrase that seems to simply state the obvious but actually implies helplessness.(単に明らかな事実を述べてるようで、実際は無力さを意味している)

B) A phrase that seems to simply state the obvious but actually means "it will be what it is," as in "it ain't gonna change, so deal with it or don’t.”(単に明らかな事実を述べているようで、実際には「こうなってしまう」、つまり「何かしてもしなくても、そいつは変えられない」と言っている) 

J: I can't believe the price of gas!(ガソリンの値段、信じられない!)

B: It is what it is.(仕方ないさ)

米国人は一般的に、optimistic(楽天的)で、困難に立ち向かっていくガッツを尊ぶ。「仕方がない」などとは滅多に口にしない。表現そのものは昔からあるが、米国人がこんなあきらめの言葉を口にするようになったのは、21世紀になってから、おそらく2001年の9/11同時多発テロ以降ではないか、と思う。

最近、随所で “It is what it is.”を見聞するようになったのは、American dream を聞かなくなったのと比例するようだ。1%の人間が富の半分を独占し、われわれ99%は貧乏人との認識が高まるにつれて、pesimistic(悲観的)な人が増えたのか、あるいは、もうどうでもいいや、という無気力が支配し始めたのか?
ところで、2007年にバグダッドに駐留した米軍の司令官の一人は、兵士らの間に“It is what it is.”が蔓延しているのに気付いたという。たとえば、“The Iraqi Army unit you’re partnering with can’t show up to an operation on time, but it is what it is.”(パートナーのイラク軍の連中は、作戦行動に間に合うように来やがらねえが、まあ仕方ねえか)など、投げやりな言い方ばかりで、これでは軍隊の規律は保てない、と感じたそうだ。“Why “It Is What It Is” is a Stupid Phrase”(「仕方がない」とはバカ言うんじゃねえ)と怒り心頭に発している。


2015年9月10日木曜日

refugee, migrant, immigrantー 違いがわかる?


refugeeは「レフュージー」で、読み方は「ジー」にアクセントを置く。ヨーロッパで問題になっているのが、内戦で国が崩壊しているシリアからの refugee。日本語では「難民」と訳すが、元の語は refuge。shelter or protection from danger, trouble, etc.(危険や困難などからの避難や保護)で、それを求めて逃げて来た人が refugee である。つまり、助けを求めている人のこと。

ロイター通信(9月6日付)は、ローマ教皇フランシスコがバチカンから難民問題で全ヨーロッパの教区に呼びかけた、と報じた。その内容はこうだ。

“I appeal to the parishes, the religious communities, the monasteries and sanctuaries of all Europe to ... take in one family of refugees.”(全ヨーロッパの教区、宗教コミュニティ、修道院、教会に、…各々が難民の一家族を受け入れることを訴えます)

では、いくつぐらい教区があるのか?
“There are more than 25,000 parishes in Italy alone, and more than 12,000 in Germany.”(イタリアだけで2万5000以上の教区があり、ドイツは1万2000以上)だから、決して少ないものではない。

ところで、欧州の難民問題のニュースでよく目にするのが、migrant crisis。migrant は「マイグラント」(移民、または移民の)で、元型は migrate(マイグレイトと読む)という動詞。本来の意味は、go from one country, region, or place to another(一つの国、地域、場所から他に移る)。注意したいのは、migrant には政治的な意味は一切含まれていない、ということ。つまり、物理的に移動する人を指す。

よく似た語に、immigrant (イミグラントと読む)がある。これもやはり日本語では「移民」と訳されるが、頭に im(元の形はin)が付くと、「入り込む」という意味になり、定住という目的が加わる。すると、急に政治性を帯びてくるのだ。immigration law の手続きが絡んで、legal(適法)か illegal(違法)かとなり、各国で「移民排斥問題」が起こる。


だが、その根底にある nationality(国籍)は、the status of belonging to a particular nation(ある国に帰属するステータス)で、その国に生まれることによって vested interests(既得権益)となるが、絶対的なものではない。この世界は誰の持ち物でもないのだ。globalization が進む中で、refugees を legal immigrants として暖かく迎える気持ちは、すべての国の国民に求められている。

2015年9月7日月曜日

「ドン引き」ー日本語と英語の発想の違い?


「ドン引き」は、放送業界の用語でカメラをズームアウトすることを指した。そこから、ネタがウケずに観客が引いた状態を示すようになる。つまり、しらけること。ドンを省略して「引くよねえ」(しらけるよねえ)などと言う。
では、ドン引きの英訳は zoom out でよいか、となると、これは文字通り画像を縮小する意味。

ドン引きを「しらける」とすると、どんな表現があるか?ここで注意しなければならないのは、日本語の「ドン引きする」、あるいは「しらける」は自動詞だが、英語の場合は他動詞となり、「ドン引きさせる」「しらけさせる」と考える。

ドンピシャが俗語表現の turn off。本来は電気などを消すことから転じて、しらけさせる、うんざりさせる、となる。“Her attitude turned me off.”(彼女の態度にドン引きしちゃった)ただし、この表現は、セックスのことを言う場合が多く、「彼女の態度で萎えた」という意味になるので要注意。

その逆はもちろんturn on で、“He turns me on.”(彼ってメッチャいけてる)

一般的に「しらけさせる」とする場合、turn の代わりに put を使って、“Her actions put us off.”(彼女の行動に私たちはドン引きした)などとできる。


ところで、「彼女はドン引き」と名詞形では、“She is a turn-off.” もう少し凝った言い方では、“She is a wet blanket.”(濡れた毛布)もある。彼女に濡れた毛布を被せられることを想像して…。

2015年9月4日金曜日

pledge ー Trumpから目が離せない


pledge は「誓約」「誓い」などと訳される。米国のメディアは9月3日、“Donald Trump signs pledge not to run as independent”(Donald Trump、第三党からの出馬はないと誓約に署名)と報じた。その誓約の内容は以下である。

“I ______ affirm that if I do not win the 2016 Republican nomination for President of the United States I will endorse the Republican nominee regardless of who it is. I further pledge that I will not seek to run as an independent or write-in candidate nor will I seek or accept the nomination for president of any other party.”

「私___は、もし2016年の共和党の米国大統領の指名を獲得しなかったとしても、共和党の指名を受けた人、それが誰であれ、支持することに同意します。さらに、第三政党、または無所属、他の政党の指名を受けることはないことを誓います」

この誓約は、共和党がトランプ氏に強制したもの。支持率のトップにあるトランプ氏が、共和党の指名から外れて無所属で出馬すれば、共和党の指名候補に大きな打撃になり、結果的に民主党に勝ちを譲ることになるとの懸念の声が広がっているからだ。

ところで、誓いを表す英単語は pledge のほかにも vow、oath、swear がある。この違いが、日本人には理解しにくいのは、誓うという行為が欧米では、キリスト教の神に誓う、神と契約するという考え方に基づくからだ。

⚫️oath(名詞)とswear(動詞)は神に向かって声に出して誓うことを意味する、いわゆる「宣誓」である。swear は make the oath。「オリンピックの選手の宣誓」は the Olympic oath。「選手宣誓」は the athlete’s oath。何を誓うかと言えば、to play clean and fair(正々堂々とプレーすること)である。

⚫️vow は名詞、動詞どちらでも使う。この言葉も神との約束であるが、ある行為、行動に自分のすべてを捧げることを誓うというもの。「結婚の誓い」は、marriage vows、wedding vowsという。


⚫️pledge は、聖書においては名詞として使われ、通例では、ある行為を保証するために差し出すcollateral(担保)のことを指した。トランプ氏は、第三党から出馬しない、という保証の意味で誓約書の署名したのである。

2015年9月3日木曜日

~-oriented ー この便利な言葉!


orient は「オリエント」。the Orient といえば東洋やアジア、とくに極東を指す。語源は中世仏語で、the east(東)あるいは sunrise(日の出)を意味する。元のラテン語の orīrī は rise で、太陽が昇るイメージを想像してほしい。その方向を東と名付けて起点にすると、残りの西、南、北とすべての方向が決まる。

そこで、orient を動詞として使うと、「方向付ける」という意味になる。“The lectures are designed to orient the new students.”(それらの講義は新入生向けである)など。最近の流行は、~-oriented(~指向の、優先の)という使い方。

⚫️ results-oriented(結果優先主義の):例えば、安倍首相の口癖、「政治は結果がすべてだ」というのを英訳すると、“The politics are totally results-oriented.” これは、judge something on the basis of the results instead of the actual action(実際の行為ではなく結果に基づいて判断する)ということ。ところが、民主主義のプロセスの本質は the actual action を重視することにある。結果がすべてだ、という考え方からは、“The end justifies the means.”(目的のために手段を選ばない)という権謀術数主義に陥りかねない。

⚫️ money-oriented(カネ儲け優先):「今の世の中は自分中心、カネカネカネの世の中だ」というのを英訳すると、“This is a self-centered, money-oriented society.” あとは言わずもがなでしょう。

⚫️ female-oriented、women-oriented(女性優先の):台頭する「女性が輝く社会」もその一つでしょうか。

⚫️ consumer-oriented(消費者優先の)

このほかにも、いろいろな名詞を前にくっつければ、~優先の、という形容詞が作れる。

ところで、orientからの派生語にorientate(動詞、orientと同じ)そして orientation(適応、順応、指向性)がある。


米国でよく問題になるのが sexual orientation (性的指向)。“What is your sexual orientation?”(あなたの性的指向は?)という質問に対して、“I am straight.”(heterosexual=異性を好む)、“I am gay or lesbian.”(homosexual=同性愛)、“I am bisexual.”(両性愛、つまり「二刀流です」)などと回答することができる。

2015年9月2日水曜日

bot ー こいつに騙される!?


bot の語源は、robot(ロボット)の bot(ボット)。ただし、ロボットのように body(体)を持たない、a device or piece of software that can execute commands, reply to messages, or perform routine tasks, as online searches(ネットのサーチのように、コマンドを実行したり、メッセージに応答したり、また機械的なタスクを行うデバイス、またはソフトウエアの一種)。

さらに、MUD(Multi-User Dungeon Game) やIRC(Internet Relay Chat)に現れる実在しない agentを指す。

GIZMOND(8月31日)の記事、“Ashley Madison Code Shows More Women, and More Bots”(Ashley Madisonのソースコードを調べると、もっと多くの女性会員ともっと多くのボットがいることがわかった)によると…

After searching through the Ashley Madison database and private email last week, I reported that there might be roughly 12,000 real women active on Ashley Madison.(先週、Ashley Madisonのデータベースと個人メールを調べて、この不倫サイトで活動している生身の女性は大体1万2000人くらいと報じた)

Now, after looking at the company’s source code, it’s clear that I arrived at that low number based in part on a misunderstanding of the evidence.(今、この会社のソースコードを調べた結果、この低い数字は、部分的には証拠の誤解に基づくことが判明した) 

Equally clear is new evidence that Ashley Madison created more than 70,000 female bots to send male users millions of fake messages, hoping to create the illusion of a vast playland of available women.(同時に、Ashley Madisonは7万以上の架空女性のボットを作って、男性ユーザーに何百万という偽メッセージを送りつけ、現実の女性と遊べる巨大な遊園地の幻想を抱かせた、という新たな証拠も明らかになった)

そのfemale bot が送ったメッセージにはこんなのがある。
Hmmmm, when I was younger I used to sleep with my friend’s boyfriends. I guess old habits die hard although I could never sleep with their husbands.(うふん、もっと若いころは、友達のボーイフレンドとよく寝たわ。彼女らの旦那とはやれなかったけれど、昔の習慣て止まないようね)

I’m sexy, discreet, and always up for kinky chat. Would also meet up in person if we get to know each other and think there might be a good connection. Does this sound intriguing?(セクシーで慎重、そしてエッチな会話はいつもOKよ。お互い知り合って、いい関係になれそうなら、個人的に会えるかしら?これって興味ありそう?)


botに騙されるよね!