2013年8月24日土曜日

churnalism - 偽物のジャーナリズム


Churnalismは、journalism(ジャーナリズム)とchurn out(粗製濫造)を組み合わせた造語。すなわち、記者が自ら取材する労を省いて、企業やPR会社が配布するプレスレリースや通信を丸写しして記事にするもので、現代のジャーナリズムのあり方を皮肉る言葉。カタカナ読みは「チャーナリズム」。

この言葉を作ったのは BBCのジャーナリスト Waseem Zakir 氏とされる。同氏は、現在のジャーナリストは積極的にニュースを探す姿勢が失われ、より機械的に処理する傾向にあると指摘。 “You get copy coming in on the wires and reporters churn it out, processing stuff and maybe adding the odd local quote. It's affecting every newsroom in the country and reporters are becoming churnalists.”(通信の原稿が入って来ると、記者はそれをちょこちょこと手直し、その過程で地元の風変わりなコメントをくっつけて記事にする。国中の全ての編集局でそんなことをやっており、記者は「チャーナリスト」=焼き直しジャーナリストになってしまった)

The Boston Globe (1991年5月2日付)では、David Nyhan氏が "When trash appears as news"(ゴミがニュースになる時)との記事でこう述べている。“The news media are sliding merrily downmarket, trying to retain shrinking advertising revenue and spur sales with spicier, riskier, gamier "news" that wouldn't have made it two or three years ago....churnalism would be a better name for it.”(ニュースのメディアは、浮かれ惚けて下り坂を滑り落ちているのが分かっておらず、広告収入が減るのを食い止め、2、3年前にはなかったような、より刺激的できわどい、言語道断なニュースで売り上げを伸ばそうとしている。チャーナリズムとは、その異名にほかならないだろう)

これは、日本でも言える。新聞や放送局のマスコミでは、外国ニュースはロイター、AP通信などの原稿を横を縦に直すだけの翻訳ですまし、国内ニュースは共同、時事通信や役所のニュースレリースの焼き直しが横行している。とくに、企業ニュースでは企業の広報部から出されるニュースレリースの丸写しが多い。この傾向は、新聞や放送がインターネットとの競争において劣勢になってから、一段と拍車が掛かっている。新聞や放送局の中には、取材経費を削られたうえ、時間との競争に間に合わず、インターネットのニュースを見ながらニュースをつくっているところさえある。

この結果、何が起こっているか?くだらないニュースがコピペ(copy & paste) でたちまちの内に増殖するだけでなく、誤報やヤラセ、提灯記事の横行で、何が本当で何がウソか分からないジャーナリズムの混迷である。


ちなみに、英語のニュースの場合は、Churnalism.com (http://churnalism.com/)で記事がchurnalismか否か調べることができます。

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