2013年2月6日水曜日

alternative shale gasは環境問題を引き起こす

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 alternativeは形容詞であるが、今では名詞として「代替案」を指すことも多い。オックスフォード英語大辞典(OED)によると、16世紀の終わりには、“stating or offering either of two things”(2つのうちどちらかを提示するか、提供すること)を言った。つまり、「二者択一の」という意味。後に選択肢は2つ以上に拡大する。名詞としての用法の拡大にともない、形容詞はalternateがalternativeの〝代替案〟となってきている。
 中東諸国に広がる反政府運動の余波で原油価格が高騰。しかも、福島第1原子力発電所の事故によって原発の安全神話が崩壊したことで、世界中で石油に代わるalternative energy(代替エネルギー)を模索する動きに拍車がかかっている。
 英BBC(2010年12月21日付)は、“Energy alternative: Shale gas extraction in the US”(エネルギーの代替案:米国でシェールガスの採取)と報じた。shale gasとは、泥が水中に堆積してできたshale(頁岩)から採れる天然ガスで、北米からヨーロッパ、アジア、オーストラリアにかけて広く分布する資源として注目され、米国で採掘が始まったという。
 タイム誌(2011年4月11日号)は、“The gas dilemma”(ガスのジレンマ)との記事で、ペンシルベニア州での採掘の実態をリポート。シェールガスの将来性を認めながらも、“But there’s a catch. It could come with significant environmental and social costs.”(だが、落とし穴がある。それは著しい環境的・社会的な費用がともなう)と指摘した。現行のhydraulic fracturing(水圧破砕)と呼ばれる採取方法では、地中深くの頁岩層に高圧の水を注入してガスを採取するが、その排水が地下水を汚染するなど環境問題を引き起こすという。
 やはりgreen alternative(環境にやさしい代替案)は、solar energy(太陽エネルギー)、wind energy(風力エネルギー)などrenewable energy(再生可能エネルギー)である。
ところで、医療の世界で注目されているのがalternative medicine(代替医療)。世界的に主流である西洋医療に対する代替という意味。complementary and alternative medicine(CAM、補完代替医療)とも呼ばれる。EUオブザーバー・ドット・コム(4月29日付)は、“EU alternative-medicine safety rules will slim down access”(欧州連合の代替医療に対する安全規則で市場アクセスは減少へ)と報道。ここでalternative medicineは漢方薬やハーブ系の薬剤を指すが、EUでは5月1日から安全性のチェックを強化。域内での危険な薬剤の販売を制限するのが狙いだ。
 さて、かつて〝鉄の女〟と呼ばれたサッチャー元英国首相は、free market(自由市場)、free trade(自由貿易)など自由主義経済を強力に推進した。彼女のモットーは、“There is no alternative.”つまり、自由主義経済の「代替案はない」。 (May 30, 2011)

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