2013年12月14日土曜日

illusionとdelusion 違いは?


illusion or delusion?
どちらも、“mental experiences that appear realistic or believable but have, despite their vividness, no objective reality”(現実のように、信じられるように見える心の経験であるが、その鮮やかさに関わらず、客観的な現実の裏付けはない) 英和辞典によると、illusionを幻影、まぼろし、あるいは思い(勘)違い、錯覚などと訳す一方、delusionを迷い、惑い、妄想、思い違いなどとしている。英語の辞書でも両者は同義語であり、混用されるケースも多い。だが、両者には明確な違いがあるのだ。

illusionの語源は14世紀にさかのぼり、act of deception(欺瞞行為)を指す。それによって人をmock at(嘲る)という。つまり、騙しの要素がある。そこで「まぼろし」という訳が出て来るわけ。一方、delusionは、15世紀に生まれた言葉で、語源はact of misleading someone(人を誤った方向へ導く行為)。その結果、その人は mental derangement(精神的な錯誤)に陥るという。つまり、その人の心の働きによりもたらされるものだから「迷い」「妄想」などと訳せる。

さて、ZDNet (2013年11月25日付)は、“Are virtual currencies reality or illusion?”(仮想通貨は現実のものか、あるいはだまくらかしの幻想か)との記事を掲載した。virtual currency(仮想通貨)とは、Bitcoinなどネットで流通する新しい通貨をいう。“Federal Reserve chairman Ben Bernanke's earlier statement is that such currencies ‘may hold long-term promise, particularly if the innovations promote a faster, more secure and more efficient payment system.’”(アメリカ連邦準備制度理事会のバーナンキ議長の初期の声明では、そうした通貨はとりわけ、技術革新がより早く、より安全な、より効率的な支払いシステムを促進するならば、長期的には見込みがあるかもしれない、としている) しかし、“Within days of all this optimism, a collapse in the yuan-denominated market for Bitcoins in China, triggered by a wave of panic and profit-taking, brought investors back down to earth.”(この楽観的なムードの中で、中国の元建てビットコイン市場が、パニックと利食い売りの波が引き金となって暴落、投資家は徹底的に叩きのめされた) back down to earthは「現実に引き戻される」という意味。筆者のこれまでの結論は、仮想通貨はillusionである。

このほか、“Life is only illusion.”(人生はまぼろしにすぎない)などという表現もできる。よく使われる optical illusion は錯視。

一方、AP通信(2013年12月7日付)は、“Idolizing dead celebrities an exercise in self-delusion”(死んだ有名人を偶像化することは自己欺瞞の業)との見出しで、例を挙げている。ケネディ大統領の場合、“Had he lived, John F. Kennedy would have ended the Vietnam War, ushered in a new era of tolerance and respect and become the proud mascot for a generation of young people devoted to public service.”(もし彼が生きていたら、JFKはベトナム戦争を終結させて、寛容と尊敬の新時代を生み出して、社会に貢献する若者世代の誇れるマスコットになったであろう) だが、事実は逆。米国史上屈指の好戦的な大統領で、米ソ冷戦を助長して泥沼のベトナム戦争に突入、キューバ危機を招き、さらに宇宙戦争まで招来しようとした。マリリン・モンローとの情事で有名となり、1963年11月22日にテキサス州ダラスで暗殺された。

そのほかの用例では、“Prime Minister Shinzo Abe is under the delusion of ‘Rich Country, Strong Military,’ peddling its illusion.” なんちゃって。





2013年12月9日月曜日

PANKとMILF 甘えたくなる女性


PANK(パンク)は“Professional Aunt, No Kids”(働くおばさん、子供なし)の頭文字語。A woman without children who dotes on her nieces and nephews(子供がなくて姪や甥を可愛がる女性)である。

英Telegraph(2013年11月11日付)によると、“Their numbers are growing: Nearly 20 percent of American women reach 40 to 44 childless, compared with 10 percent in the 1970s, said a 2008 Pew Research Center report.”(彼女らの数は増えている:2008年のピュー・リサーチ報告は、40歳から44歳になって子供のない米国女性は、1970年代には全体の10%だったのに比べて、今はほぼ20%に達しているという)

もちろん、これらの女性がみんなPANKというわけではない。米Minneapolis Star Tribune(2012年2月12日付)は、“PANKs: Happy with the role of aunt.”(PANK:喜んでおばさん役を務める)と述べている。ネット上には、こうした女性のコミュニティもできている。その一つ、Savvy AuntieはこうPRしている。“PANK is the new pink; it’s the new, modern segment of women finally getting the attention it deserves through Savvy Auntie ― the first online community for Aunts.”(PANKは新しいピンク=日本でいうナデシコ。最初のおばさんのオンラインコミュニティである「粋なオバちゃん」を通じて世間の注目を集めるに至った現代的な女性の一群)という。PANKはこのコミュニティの登録商標であるという。

PANKは、子供目線がある。というのも、自分を甘やかしてくれるし、高価なおもちゃも買ってくれるというわけだ。セレブのPANKには女優のCameron Diaz =Photo=や Jennifer Anistonがいる。“Diaz, who has no children, was present at the birth of all her three nieces and admits she spoils them rotten.”(子供のいないディアスは、3人の姪の誕生日に出て、うんと甘やかしているわといっている)

ところで、おばさん世代の女性のもう一つの略称がMILF というスラング。“Mother (or ‘Mom') I'd Like (to) Fuck” の頭文字をつないだもの。Motherは本当の母親というよりも、母親と同じくらい年上の女性という意味で、PANKと重なる世代といえる。MILFは性的な対象としての年上の女性を指し、日本語の「熟女」に当たる俗語。1990年代からネットに登場し、1999年のセックスコメディ映画American PieでJennifer Coolidgeの ‘Stifler’s Mom’ のキャラクターで一躍知られるようになった。現代では、アダルトビデオの「熟女もの」の代名詞である。

Wikipediaによると、派生語として、50歳代半ば以上、または実際に祖母である女性の場合はMがgrandmotherのGに置き換わり、GILFなどというそうだ。2008年アメリカ大統領選挙における共和党の副大統領候補者サラ・ペイリンはVPILF(Vice President I'd Like to Fuck)、あるいはGILF(Governor I'd Like to Fuck) と言われたとも。

PANKもMILFも、子供や若者を虜にする存在であるようだ。


2013年12月1日日曜日

404 世界中に知れ渡った単語!


404(four oh four)はウェブの三桁番号で、“Not Found”(見つかりません)の error message(エラーメッセージ)。HTTP standard response code(HTTPの標準応答コード)の一つで、ユーザーはサーバーに接続できたものの、サーバーが該当するウェブページを発見できなかったことを指す。すなわち、failure(失敗)を意味する。

世界中の英語の動向をウォッチする Global Language Monitorは、404とfail(失敗する)を2013年の流行語大賞に選んだ。講評は以下の通り。

404 ー The near-universal numeric code for failure on the global Internet.(グローバル・インターネットにおいて、「失敗」を意味するほとんど普遍的なコード)
fail — The single word fail, often used as a complete sentence (Fail!) to signify failure of an effort, project, or endeavor.(単語のfailは、しばしば完成文として用いられ、努力や事業、または試みの失敗を意味する)

では、「成功」を示すHTTPの標準応答コードは何か?“For a normal web page, the status is 200 OK.” (通常のウェブページにとって、ステータスは200でOK)。だが、うまくつながった場合は、もちろんこのメッセージは不要となり、ユーザーには見えないのだ。

ところで、404が流行語になったのは、それだけページ・エラーが激増している背景がある。ある批評家は、“Trend of the day: 404 Fatigue”(今日のトレンド:404による慢性疲労)と皮肉るほど。これは、一般のウェブサイトのデザインの技術レベルと、使用されるブラウザや検索エンジンの技術レベルの格差が大きく開きつつあることから生まれた現象であると考えられる。とくに、ブラウザと検索システムは一体化する傾向が強まっており、マイクロソフトやアップル、googleなどは、独自のシステムでユーザーの囲い込みを進めていて、昔ながらの技術レベルで作られたサイトは取り残されていく傾向にある。とくに、googleの検索でトップにランキングされるためには、この404エラーの解消が大きな課題となっている。

さて、404は今や一般名詞として使われるようになりつつある。例えば、2011年のギリシャでの反政府デモでは、“Error 404: Democracy not found” (エラーコード404:民主主義が見つかりません)というスローガンもあった。また、404は俗語としてclueless(手掛かりなし)の意味でも使われるという。 


2013年11月24日日曜日

pay back「倍返し」は何て訳すの?



pay backは借金などを「返済する」ことだが、日本語で「借りを返す」というように、「仕返しする」(retaliate)意味でも使う。名詞形はpayback

ロサンゼルス・タイムズ(20131113日付)は、“Calderon says investigation is payback”(カルデロン氏は、捜査は仕返しだと述べる)と報じた。本文にはこうある。“State Sen. Ronald S. Calderon, who is being investigated by the FBI on suspicion that he accepted bribes, accused federal authorities Wednesday of trying to smear him for refusing to wear a wire in a sting operation against two other senators.”(カリフォルニア州上院議員のロナルド・カルデロン氏は、FBIに賄賂を受け取った容疑で捜査されているが、水曜日に、ほかの2人の上院議員に対しておとり捜査をするために盗聴器を身につけることを拒絶したとして、自分を中傷しようとしている、と捜査当局を非難した)sting operationはおとり捜査で、米国では正当な捜査手法と見なされている。カルデロン氏の主張が正しいとすれば、このpaybackはまさに「意趣返し」(revenge)であろう。

さて、今年の流行語にドラマ・半沢直樹で有名になった「倍返し」がある。これをどう訳すか?ネットを調べてみると、ウォールストリート・ジャーナル(2013年9月4日付)のブログで、筆者のAtsuko Fukaseさんは、“Fictional Japanese TV banker takes double the payback”と訳していた。ここでpaybackが登場する。これをもう一度日本語に直訳すると、「虚構の日本のテレビドラマの銀行員は、倍にして仕返しする」となる。“Hanzawa’s signature expression, ‘take double the payback’ is now showing up everywhere–in magazines, newspapers and conversations.”(半沢の決め台詞「倍返し」は今や雑誌、新聞、日常会話で、ありとあらゆるところに登場している)と述べている。pay back(動詞形を使って、pay back double (倍にして返す)ともいえる。

このpaybackをおなじみのrevenge(リベンジ)に替えてtake double the revengeでもいい。定冠詞のtheがあるのは、「あの借りを返す」の「あの」に当たる。前にとる動詞はtakehavegetなどで、共同通信社は、「やられたらやり返す。倍返しだ!」を、“An eye for an eye. I'm gonna get double revenge!”と訳していた。一般的な言い方として定冠詞は省略。もちろん、double revenge(倍返し)だけでもよい。

ところで、“an eye for an eye” は文字通りでは「目には目を」で、“An eye for an eye, and a tooth for a tooth”(目には目を、歯には歯を)と続き、旧約聖書の出エジプト記にあることわざだが、古くはメソポタミア文明で栄えたバビロニアのハムラビ法典に起源をもつ“lex talio”(ラテン語で、同害報復)の原則を指す。Retaliate(報復する)の語源はこのtalio

だが、なぜこんな法律が生まれたのか?実はそれ以前の未開の時代は、倍返し以上が普通だった。やられたら怒りにまかせて滅茶苦茶にやっつける世界であったが、それでは秩序が保たれないからだ。しかし、偉大なキリストは、「やられたらやりかえす」でもダメだとおっしゃったのである。新約聖書のマタイ伝にこうある。

You have heard that it was said, “An eye for an eye and a tooth for a tooth.” But I say to you, do not resist an evildoer. If anyone strikes you on the right cheek, turn to him the other also.(あなたは、目には目を、歯には歯をといわれるのを聞いた。しかし、私はあなたに言おう。悪人を拒んではならない。誰かがあなたの右の頬を打ったならば、もう一方の頬も向けなさい)

仏教にいう。恨みに対するに恨みをもってしたならば、永久に恨みの絶えることはない。恨みに対して、恨みを捨てよ、と。いずれも、忍耐と強い精神力を要求する教えである。それに比べれば、「倍返し」は先祖帰りともいえる激情の発露であろう。

さて、ネットを調べていたら以下の表現に行き当たった。
You will see!   今に見てろ!
Keep your guard up! ガードを上げておけよ
You’ll pay for this! ただじゃおかないぞ!
Watch your back! 背中に気ぃつけぇやぁ
最後の決め台詞。

“I will pay you back double!”(倍返しだ!)

2013年11月15日金曜日

pseudo 「なんちゃって〜」はどう訳すの?


なんちゃってラーメン、実はケーキ
pseudoはカタカナ読みでは「スードウ」。「にせの」「〜まがいの」を意味する形容詞。pseudonym(仮の名前)はペンネーム。pseudoscience(えせ科学)はすなわち、科学に似ているが偽の仮説に基づいたホラ。

ところで、流行語となった「なんちゃって〜」は、「〜まがいの」という意味でならば、pseudo-がぴったり。例えば、最近、若い女性に流行している簡単にロングヘアーをボブに変える「なんちゃってボブ」は、英語でずばりpsuedo-bob。また、ネットにはびこる「なんちゃって右翼」はpseudo-rightsでよい。

World socialist Web Site(2013年11月13日付)は、“New Zealand pseudo-lefts promote new Labour leader”(ニュージーランドのなんちゃって左翼が新たな労働党の党首を支援)と報じた。“New Zealand’s middle-class pseudo-left groups—Fightback, Socialist Aotearoa (SA) —have all rallied behind the new opposition Labour Party leader David Cunliffe.”(ニュージーランドの中産階級のなんちゃって左翼グループ「反撃、社会主義者アオテアロア」は、新たな野党労働党のDavid Cunliffe党首を背後で支援してきた)

さて、同じ「なんちゃって〜」でも自ら望む場合は、wannabe(〜気取り、なりたがり屋)を使う。カタカナ読みは「ワナビー」で、元の形はwant to be(なりたい)。例えば、Madonna wannabes(マドンナのようになりたい人)は「なんちゃってマドンナ」であろう。

Digitalspy(2013年11月11日付)によると、“George Clooney reignites Russell Crowe feud: He's a Sinatra wannabe”(ジョージ・クルーニーがラッセル・クロウとの確執を再燃させる:やつはなんちゃってシナトラだ)。

Speaking about how Crowe attempted to bury the hatchet, Clooney told Esquire: “The truth is that he did send me a book of poems to apologise for insulting the s**t out of me, which he did.

"And that's when he really went off on me. Who the f**k does this guy think he is? He's a Frank Sinatra wannabe. He really went after me."

さて、以上はどういう意味か?bury the hatch(手斧)は日本語でいう「矛をおさめる」、つまり「仲直りをする」。the s**t out of は、伏せ字はshit(くそ)で、文字通りの意味は「私からくそを絞り出す」、つまり「徹底的に」。
クロウが仲直りを試みたことについて、クルーニーはEsquire誌にこう話した。「本当いうと、やつは徹底的におれを侮辱したことで、詩集を送ってわびを入れて来たんだ」
「やつが突然起こりだした時さ。やつはいったい何様だと思っているのかね?やつこそなんちゃってフランク・シナトラだよ。やつはおれのまねばかりしているのさ」

このいきさつについては以下をお読み下さい。

During his recent interview with the folks at Esquire magazine, the Monuments Men star discussed the book of poetry he once received from the Gladiator star as an apology. Apparently Crowe felt bad about some of the things he said in the past.

According to Female First, Russell Crowe had a problem with George Clooney using his celebrity to sell everything from booze to suits. When Clooney compared his ad work to Crowe’s band 30 Odd Foot of Grunt, the Man of Steel star lost his cool.

“I had a good laugh when Clooney tried to compare doing ads for suits, a car, and a drink to what I do as a musician. An endorsement is about money My music is from the heart. I believe if you take on characters for a living you can’t make yourself into an icon in order to sell a pair of shoes,” Crowe said.

To apologize for calling George Clooney a “sellout” and “Frank Sinatra wannabe,” the Australian actor sent the Intolerable Cruelty star a present.

“The truth is that [Russell Crowe] did send me a book of poems to apologize for insulting the s*** out of me, which he did,” Clooney told the publication.




2013年11月10日日曜日

smug ドヤ顔って英語で何ていうの?


smug はずばり、「ドヤ」(どうや)という自己満足を表す形容詞。メリアム・ウェブスター辞書によると、“having or showing the annoying quality of people who feel very pleased or satisfied with their abilities, achievements, etc.”(自分の能力や業績などに大変喜ぶか、満足している人々の嫌な面を持っていたり、見せつけている)と定義している。つまりexcessively self-satisfied(ひとりよがり、自己満足し過ぎ)。

SuperSport (2013年10月13日付) は、“Keshi smug after win”(ケーシー勝って得意満面)と報じた。サッカー・アフリカのチャンピオンズ・リーグでナイジェリアがエチオピアを破った試合、“Nigeria coach Stephen Keshi is happy with their result.”(ナイジェリアのスティーブン・ケーシー監督は結果に満足している)。“The team was forced to come from a goal down to win the fixture 2-1 courtesy of late goals.”(試合は、チームが1点先行されたが、後半の2点ゴールで2−1で勝利した)“I’m happy we got a good result from here.”(ここでよい結果を残せて満足だよ)と監督。

こういう感じがsmugのニュアンス。しかし、語源は16世紀にさかのぼり、trim(きちんとした)・neat(かっこいい)・spruce(めかした)・smart(スマートな)など外見の良さを強調したが、18世紀から「ひとりよがりの自己満足」を皮肉る言葉となった。

ところで、日本のテレビで流行語になった「ドヤ顔」は文字通りsmug faceでよい。こういう表現は世界共通、とくにセレブや政治家の得意顔を皮肉る言葉になっている。なかでも、オバマ米大統領のsmug faceは人気があるようだ。英国インディペンダント(2012年11月2日付)は、“The Barack Obama smug face: What do you really think about the US elections?”と題して、読者クイズを出している。2012年の米中間選挙の結果を受けたオバマ氏の顔を、A) smug(満足そう) B) exhausted(憔悴している) C) stoned(酔っぱらっている) D) dejected(意気消沈している) E) wise(賢そう) F) none of the above (上記のいずれでもない)からチョイス。

評価: A) と答えた人は、“You are a Republican voter sensing defeat on the horizon. You hate poor people.”(あなたは、民主党の負けを見越して共和党に投票する。貧乏人を嫌っている) 注:この選挙で下院は民主党が大敗し、上下院がねじれた。 B) You are an over-empathizing wishy-washy liberal. You had muesli for breakfast.(あなたは、民主党に肩入れし過ぎの優柔不断のリベラル。朝食にはミューズリーのシリアルを食べたな) C) You are stoned.(あなたが酔っぱらっている) D) You've had a really bad week, and suspect the weekend will be even worse.(この一週間本当によくなかったので、週末もなお悪いと感じてるな)....



2013年8月24日土曜日

churnalism - 偽物のジャーナリズム


Churnalismは、journalism(ジャーナリズム)とchurn out(粗製濫造)を組み合わせた造語。すなわち、記者が自ら取材する労を省いて、企業やPR会社が配布するプレスレリースや通信を丸写しして記事にするもので、現代のジャーナリズムのあり方を皮肉る言葉。カタカナ読みは「チャーナリズム」。

この言葉を作ったのは BBCのジャーナリスト Waseem Zakir 氏とされる。同氏は、現在のジャーナリストは積極的にニュースを探す姿勢が失われ、より機械的に処理する傾向にあると指摘。 “You get copy coming in on the wires and reporters churn it out, processing stuff and maybe adding the odd local quote. It's affecting every newsroom in the country and reporters are becoming churnalists.”(通信の原稿が入って来ると、記者はそれをちょこちょこと手直し、その過程で地元の風変わりなコメントをくっつけて記事にする。国中の全ての編集局でそんなことをやっており、記者は「チャーナリスト」=焼き直しジャーナリストになってしまった)

The Boston Globe (1991年5月2日付)では、David Nyhan氏が "When trash appears as news"(ゴミがニュースになる時)との記事でこう述べている。“The news media are sliding merrily downmarket, trying to retain shrinking advertising revenue and spur sales with spicier, riskier, gamier "news" that wouldn't have made it two or three years ago....churnalism would be a better name for it.”(ニュースのメディアは、浮かれ惚けて下り坂を滑り落ちているのが分かっておらず、広告収入が減るのを食い止め、2、3年前にはなかったような、より刺激的できわどい、言語道断なニュースで売り上げを伸ばそうとしている。チャーナリズムとは、その異名にほかならないだろう)

これは、日本でも言える。新聞や放送局のマスコミでは、外国ニュースはロイター、AP通信などの原稿を横を縦に直すだけの翻訳ですまし、国内ニュースは共同、時事通信や役所のニュースレリースの焼き直しが横行している。とくに、企業ニュースでは企業の広報部から出されるニュースレリースの丸写しが多い。この傾向は、新聞や放送がインターネットとの競争において劣勢になってから、一段と拍車が掛かっている。新聞や放送局の中には、取材経費を削られたうえ、時間との競争に間に合わず、インターネットのニュースを見ながらニュースをつくっているところさえある。

この結果、何が起こっているか?くだらないニュースがコピペ(copy & paste) でたちまちの内に増殖するだけでなく、誤報やヤラセ、提灯記事の横行で、何が本当で何がウソか分からないジャーナリズムの混迷である。


ちなみに、英語のニュースの場合は、Churnalism.com (http://churnalism.com/)で記事がchurnalismか否か調べることができます。

2013年7月26日金曜日

threenager 育児ノイローゼのお母さんへ


 three-nagerとも書く。threeは3で、-nagerはteenagerの-nager。Wordspyには、“a three-year-old who displays the moodiness and attitude of a teenager”(ティーンネージャーのようなむら気や態度を示す3歳児)と定義している。
 3歳児というのは、無心な赤ちゃんの時期を通り過ぎて人間として自我が芽生えるころで、自己主張が始まり、親の言うことを聞かなくなる。そこで「幼児の反抗期」ともいう。この事情は英語世界でも同じで、この難しい幼児をthreenagerという。
 この言葉が出始めたのは21世紀に入ってからのようで、The Daily Telegraph ( 2005年8月2日付)に Julia Robsonさんが “A small price to pay”(小さな出費)とのタイトルで、こう書いている。
 “With the summer sales in full swing it makes sense to stock up on clothes for next year, but bear in mind how radically a toddler's body changes in 12 months. Moreover, your laid-back two-year-old can also suddenly become a scarily opinionated ‘threenager’ with strong views about what he or she will and won't wear.”(サマーセールがたけなわで、来年用に衣服を買いだめするのはいいが、この12ヵ月で体がどんどん大きくなる子供のことを心に留めておこう。しかも、無心の2歳児が突如、恐ろしく口うるさいthreenagerに変わり、何を着て何を着ないなどと言い張るのだ)
 toddlerとはtoddle(よちよち歩く)の名詞形で、歩き始めの子。主に1、2歳児の子供に使う。このころは可愛いだけだが、3歳になるころから人並みのことを口走り、ひいては母親の育児ノイローゼの原因ともなる。
 アメリカの育児サイトにも、“When your child hits three, he or she can often think he or she is the centre of the universe - Your toddler is now starting to assert his or her independence and become more willful.”(子供が3歳になると、しばしば自分を世界の中心と考える。よちよち歩きの子は今や独立を主張し、より意思を持つようになる)
 これは、実は結構なことなのだ。いつまでも、へばりつかれたら親はたまったものではない。だが、親の方から見れば、子供はいつまでも言うことをよく聞く子供であって欲しい。
 そこで、“What can I do to tame a threenager?”(threenagerをなだめるにはどうすればいいか)
 “The best thing you can do when you have a raging threenager on your hands is stay calm. ”(腕の中で暴れる3歳児に対処する最善の方法は、親が冷静にしていること)。これは実際なかなか難しいことだ。なぜなら、子供は親の足下を見るから。だが、親がかんしゃくを起こすなどもってのほかで、それだけ知恵がついてきたのだと、喜ぶべきなのだ。
 忘れてはならないことがある。“Kids often mirror the behavior of their parents, so by staying calm you're teaching them how to keep control of their feelings even when there are problems. ”(子供はしばしば親の行動を真似る。親は冷静に振る舞うことで、問題が起こったときにどのように感情をコントロールするか、子供に教えることになる)
 A Pun Tip: 日本語では「知らんぷり」、英語では “sit down please”。



 

 

2013年6月30日日曜日

snailpaper  新聞の運命を示す


 snailは「カタツムリ」で、paperはnewspaper(新聞)の略称。Wordspy の定義によると、snailpaperは“a newspaper delivered physically and so more slowly compared to online news; the print edition”(オンラインのニュースに比較すると、物理的に配達されるのが遅い新聞:印刷版)。今や新聞はインターネットとのニュース競争に負けて、カタツムリのように遅い「旧聞」になったということ。
 TeleRead(2013年6月8日付)の“Scissors, Paper, Screen: The Future of Reading”(ハサミと紙とスクリーン画面:読書の未来)という記事で、“It's 2013. The screens are winning adherents left and right. Print newspapers are turning into 
‘snailpapers’ that arrive at our doorsteps with news that is 12 hours late.”(今は2013年、スクリーン画面は左右両陣営の支持を獲得しつつある。紙の新聞は、ニュースが12時間遅れで玄関に届けられる、カタツムリのような「旧聞」になりつつある)と述べている。
 ニュース報道を旨としてきた新聞は、ネットと同じニュースを掲載する限り、ここに述べられている通り、12時間遅れの「旧聞」でしかない。おそらく読者は、インターネットと縁のない高齢者などに限られるだろう。新聞の未来は大きく変わり始めているのである。
 さて、ネットの黎明期の1980年代にsnail mailという新語が登場した。すなわち、“letters, bills, and other mail delivered physically and therefore much more slowly than e-mail”(物理的に配達される手紙や請求書の類いでEメールよりはるかに遅い)というものだ。この時すでに、今日の状況が予想されていたのである。
 しかしながら、紙の新聞は衰えつつあるにしても、ニュース報道は今後も必要とされるだろうし、ますますより素早い報道が要求されていくだろう。おそらく、smart phoneがこれからのニュース端末になることは間違いないのだ。
 その一方で、紙の新聞は発展途上国などで依然勢力を持つように、今しばらくは存続するだろう。
 それにしても、紙の新聞や書物はスクリーン画面と違って確かに遅いけれども、考える時間を与えてくれる。上記のTeleRead の記事は、“Will poor countries where paper books still prevail produce children who are smarter than those in wealthy countries where all children read on screens?”(紙の書物が普及している貧しい国の方が、スクリーン画面で本を読む豊かな国の子供よりも、より賢い子供を生み出すだろうか)と結んでいる。


2013年6月19日水曜日

YOLO 流行の捨て台詞


 YOLOは“You only live once”の頭文字を取った略語。すなわち「人生は1度しかない」。“carpe diem”(seize the day = この日をつかめ)とか、“memento mori”(死を忘れるな)と同じ意味合いで、 “One should enjoy life”(人生を楽しむべし)との含みがある。
 カナダ人ラッパーのDrakeが自作ソングの“The Motto”(2011)で、“You only live once. That is the motto, YOLO”(人生一度しかない。それがモットー、ヨロさ)と歌ったのがきっかけで、アメリカで流行。ネットでもLOL (Lough out loud=大笑いする)などと同じように使われるようになった。
 ところで、“You only live once”のフレーズは、米女優の Mary Jane West (1893-1980)が言い出したとも伝えられる。彼女は歌手、劇作家、スクリーン・ライターの経歴を持ち、またセックスシンボルとして人気を博した。
 また、“You only live once” は1937年に Fritz Langの film noirの題名に使われたという。さらに、1952年にはコメディアンのJoe E. Lewisが “You only live once, but if you work it right, once is enough.”(1度しかない人生だけど、正しく生きるならば、1度で十分さ)と述べている。
 ところが、ワシントン・ポストやハフィントン・ポストではYOLO を、“newest acronym you’ll love to hate”(憎みたくなる頭文字の言葉)とか “dumb”(バカ)とか、その無軌道な使い方をはげしく非難した。実は2012年9月、21歳のラッパーErvin McKinnessが、酔っ払い運転で 120 mph(193 km/h)のスピードを出して事故死する直前、Twitterに “Drunk af going 120 drifting corners #FuckIt YOLO.”(酔っ払って120マイルでカーブをドリフト。コン畜生メ。ヨロ)と書いたのだ。
 ボストン・グローブ(2012年8月 26日付)に、 “What is YOLO? Only teenagers know for sure-A youthful slang craze flies under the adult radar”(YOLOとは何か?10代だけがはっきりと知っている。大人のレーダーに掛からない若者のスラング熱)との記事が載っていた。
 最近の若者の使い方はこうだ。“You want to park illegally in this spot? YOLO!”(あんた、ここに違法駐車する気?勝手にしたら) “Should I buy these shoes or pay rent? YOLO!”(この靴買うか、借りるか。1度きりだから)
 YOLO is now “used by teens only as an absolute justification to do dangerous or harmful things.”(YOLOは今やティーンエイジャーによって、危険で有害な行為を絶対に正当化するためにだけ使われている)というのだが・・・。

2013年6月10日月曜日

mastectomy  お乳切っちゃうって、すごい勇気


 mastectomyの語源は、ギリシャ語のectomeがcutting(切除)、mastosが woman's breast(女性の胸)で「乳房切除術」。一般的に、乳がんにかかった女性ががんの治療のためにこの手術を受けて乳腺や乳房を切除する。カタカナ読みは「マステクトミー」。
 mastectomyは一躍、世界中に知られる英単語の一つとなった。理由は、米女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、自身の遺伝子を検査してもらった結果、乳がんを発症する確率が87%以上と非常に高いことを知って、予防措置として両方の乳房を切除したことを公にしたことによる。彼女の母親は2007年に56歳で乳がんと卵巣がんを発症して死亡、また叔母も乳がんで亡くなっているという。
 父親で俳優のJon Voight氏はEntertainment Tonightのインタビューにこう答えた。”She's a very brave person and I love her deeply. I'm always going to be at her side. She handles herself very well. She says what she wants to say now."(彼女は大変勇敢な女性で、私は深く彼女を愛している。私はいつも彼女の味方だ。彼女はうまくやっている。今も言いたいことを言っている)
 対称的なのは彼女のパートナーのブラッド・ピット。彼は病床のアンジェリーナに愛の手紙を読み上げて、大粒の涙を流していたという。
 さて、She's a very brave person から思い出すのはAmazonである。Amazonはギリシャ神話に登場する伝説的な女人族で、英語ではthe Amazons。いわゆる「アマゾネス」はポルトガル・スペイン語(Amazonas)。その語源はfolk etymology によると、a- はwithout(ない)+ mazos はbreasts(乳房)で、「乳房がない」という意味だ。 これはthe story that the Amazons cut or burned off one breast so they could draw bowstrings more efficiently(アマゾン族の者は片方の乳房を切除したり、焼いたので、よりうまく弓が引けたとする話)に基づいているという。
 戦争のために、乳房を切除することも辞さなかった勇猛果敢な女性たち。彼女らにとって、男はstallion(種馬)に過ぎなかったとも伝えられる。 
 ちなみに、医学用語ではMastectomyは切除部位によって名称が異なる。Radical Mastectomy(根治的乳房切除術)、Segmental Mastectomy(乳房扇状部分切除術)、Simple Mastectomy(全乳房切除術)、Subcutaneous Mastectomy(皮下乳房切除術)という。

2013年5月17日金曜日

outrageous このニュアンスを分かって欲しい



 outrageous(形容詞)の名詞形はoutrage。語源はout+rage(怒り)ではなく、outr (ultra)+ageで"the passing beyond reasonable bounds"(度を越すこと)を指す。つまり、outrageousは「常軌を逸した」という意味だが、転じて「乱暴な」「非道な」となる。だが、動詞としてのoutrageにはもう一つの意味がある。ずばりrape(強姦する)である。このニュアンスを理解してコンテキストの中で意味をくみ取る必要がある。
 日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長が、戦時の慰安婦問題について自らの見解を述べたことについて、米国務省の報道官が批判した。
 Kyodo News International (May 16, 2013) は、“Hashimoto's remarks on sex slaves ‘outrageous’: U.S. State Dep't”と報じた。このoutrageousはどんなニュアンスを持っているのか?
 そもそも、軍隊に従属した兵士の性処理のための女性を「慰安婦」と捉える論理と、sex slaves(セックスの奴隷)とする論理は、最初からすれ違っていると言わねばならない。というのは、「慰安婦」は男性の立場からの言葉であり、sex slavesは女性の側に立った言葉であるからだ。
 そこで、Jen Psaki氏(女性報道官)が、記者会見でどう発言したのか見てみよう。
 "As the United States has stated previously, what happened in that era to these women who were trafficked for sexual purposes is deplorable and clearly a grave human rights violation of enormous proportions."(合衆国は以前から主張しているように、その時代に性的目的のために違法に取引された女性の身の上に起こったことを、痛ましいことであり、明らかに著しい人権侵害だったと考えている)
 つまり、Psaki氏が問題にしているのは、trafficking(人身売買)と、その後のwhat happened to these womenであり、それがいかなる文言を使うにしても容認する発言はoutrageousであると感じたのである。「言語道断」との訳を見かけたが、「(女性の人権を踏みにじる)あきれた暴論」といいたいようだ。彼女の頭をよぎったのはrapeであろう。
 アメリカで深刻な問題となっているのが、米軍の内部で横行する兵士のsexual assault(性的暴力)である。そのほとんどのケースが、男性兵士が酒に酔って女性を襲うというもので、とくにイラクやアフガニスタンなど生死を争う厳しい環境で後を絶たないのだ。
 橋下氏は、在日駐留米軍に対して、兵士の性処理のための風俗業の活用を説いた、だが、実際に性的暴行などの問題を起こす兵士は精神障害を起こして追い詰められており、沖縄での相次ぐ事件を見ても分かるように、米軍はもはや、帰還兵を自由に外出させること自体さらに問題を引き起こすことになりかねない、と深い懸念を持っている。

2013年5月16日木曜日

glasseslike 近未来を開くGoogle Glass



 メガネはa pair of glassesという。そこでglasseslikeは「メガネのような」(Resembling eyeglasses)という形容詞。だが、とくにGoogleが開発を進めている, wearable computing device(身体に装着するコンピューターのデバイス)Google Glass(「グーグル・グラス」)を指す。   
 The New York Times (May 6, 2013) は、グーグル・グラスについて、”Google's wearable computer, the most anticipated piece of electronic wizardry since the iPad and iPhone”(グーグルの装着コンピューター、iPadや iPhone以来、もっとも期待される電子のすぐれもの)と述べている。つまり、”The glasseslike device allows users to access the Internet, take photos and film short snippets”(そのメガネのようなデバイスによってインターネットにアクセスできるほか、写真やビデオの撮影もできる)という。なるほど、「マトリックス」や「甲殻機動隊」のような近未来世界が一気に開けるというわけ。
 だが、May 15には、Googleはこのデバイス向けのアプリの開発者の会議を招集した。同日付のThe New York Timesは、”Glass seems nowhere to be found, except on the faces of developers who have agreed to pay $1,500 for the device.”(グラスを掛けていたのは、1500ドルを支払うことに同意した開発者だけで、ほかには見当たらないようだ)と書いていた。
 私も売り出されたら、ぜひ買いたいと考えているが、米国ではもうすでに映画館やバーなどでglasseslike deviceを装着しての入場を禁止すると表明しているところがあるという。時代の流れは何とも速い。


2013年5月13日月曜日

smartphone face スマートフォンばかり見ていると・・・




 smartphone faceは「スマートフォン顔」だが、スマートフォンの表という意味ではない。A drooping jawline and saggy jowls caused by neck muscles that have been shortened from constantly looking down at a smartphone(ずっとうつむいてスマートフォンばかり見ていると、クビの筋肉が萎縮して、あごの線が下がり、下あごの部分が垂れ下がってくる。(From Wordspy.com) つまり、こんな顔=写真=になるというわけ。
 smartphone faceはあごが垂れ下がるからsmartphone sagともいう。整形美容医師の観察から生まれた新造語で、a new ailment from smartphone addiction(スマートフォン中毒から来る新たな病気)と位置づける。”Your smartphone can make your face sag.”(スマートフォンで顔が垂れ下がる)下あごが下がると、日本語でいう「仏頂面」のような、いかにも不機嫌な表情に見える。そういえば、電車の長いすに並んでスマートフォンをいじくっている人たちの顔は、近寄りがたいものがあるよな。
 アメリカ形成外科学会(the American Society of Plastic Surgeons =ASPS) によると、Chin implants or ‘chinplants’ are becoming the fastest growing plastic surgery trend, and in 2011 the popularity of the procedure grew more than that of the boob job.
 (あごの移植が形成外科の最近のトレンドになりつつあり、2011年には豊胸術をしのぐ人気であるという)
 確かに、老化にともないあごの筋肉は下がる。高齢化が進むにつれて、美容整形は〝若返り〟を目指すからchinplantsはこれからのターゲットとなりそうだが、スマートフォン顔がそれに拍車を掛けているのは間違いない。

2013年5月3日金曜日

demise 「終わり」を表す正式の堅い表現

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 demiseは、書き言葉として「消滅」「終焉」の正式な表現。また、君主の「崩御」や、「逝去」などdeath(死)の婉曲表現として使われる。オックスフォード英語大辞典(OED)によると、語源は古仏語のdemettreで、別の英語ではdismiss(去らせる、退出させる)。転じて王位を譲る、さらに遺された不動産を移譲することをいう。カタカナ読みは「ディマイズ」。
 米航空宇宙局(NASA)の最後のスペースシャトル「アトランティス」が2011年7月21日に帰還し、30年に渡ったシャトルの時代に幕が下りた。英BBC(7月19日付)は、“Shuttle's demise brings Titusville down to earth”(シャトルの終焉がタイタスビルを現実に引き戻す)と報じた。タイタスビルは、NASAの本拠地Kennedy Space Centerのすぐそば。シャトル計画の終わりとともに8000人以上が解雇され、シャトルの打ち上げでにぎわった地元の観光事業も大幅に縮小という。
 だが、このdemiseを“blessing in disguise”(見かけは悪そうだが実はありがたいもの)と見る人もいる。“This town is full of people who put man on the Moon and ran shuttles for 30 years.”(この町には、人類を月に送りシャトルを30年間運用した人々がたくさんいる)。“We’ll still be a part of space here.”(私たちはここでは依然、宇宙の一部なのだ)と住民は考えており、新たな宇宙プロジェクトはこの町からきっと始まると期待している。
 さて、英国ではメディア王ルパート・マードック氏傘下の日曜版大衆紙が盗聴疑惑の末に廃刊に追い込まれたが、ロイター通信(7月20日付)は、“UK's Sunday Mirror gains on Murdoch tabloid demise”(英国のサンデー・ミラー紙がマードックの大衆紙の廃刊で利益)と報じた。サンデー・ミラーは、ライバル紙の廃刊で50%売り上げを伸ばしたという。つまり、英国の日曜版大衆紙の需要は依然旺盛で 、“front-page splashes on sex and celebrity”(セックスやセレブに関する一面のケバい見出し)は〝売り〟である。新規参入を考える企業もあり、屍を乗り越えて進む…。

heatstroke

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 heatは「熱」、strokeは「打撃」、また転じて「発作」。heatstrokeは、熱による発作、「熱射病」と訳される。sunstroke(日射病)と並ぶ言い方。
 最近では「熱中症」の語が一般的。これはhyperthermia(カタカナ読みは「ハイパーサーミア」)という医学用語に相当する。普通の英語では、heat-related illness。その中でheat cramps(熱性けいれん)、heat exhaustion(熱疲労、暑気あたり)、heatstrokeと分類されるが、新聞メディアでよく見るのが、命にかかわるheatstroke。
 20011年夏も北半球の各地で、heat wave(熱波、猛暑)が襲来。ロイター通信(7月16日付)は、“Heat wave lingers, submerges U.S. in sizzling temperatures”(熱波が停滞、米国はうだるような気温に沈む)と報じた。このsizzleという動詞は、油で揚げる時にジュージュー音を立てることを指し、いかにも暑そうな表現だ。
 それだけに、米CNN(7月13日付)は早々に“Heatstroke: A deadly hazard of summer”(熱射病、死に至る夏の危険)と警告。その中で、“Heat exhaustion involves elevation of body temperature, headaches, nausea and vomiting.”(熱疲労は、体温上昇、頭痛、吐き気やおう吐を伴う)として、これらの兆候に注意を促した。さらに、めまいや意識の混濁が起こるとheatstrokeで、取り返しのつかない事態になりかねない。
前段のheat exhaustionを防止するには、“Drink plenty of water throughout the day.”(日中は水分を十分に取ること)だが、カフェインやアルコール入りは、脱水症状を促す危険性があるのでダメ。“Air conditioning is the most effective way to cool off and prevent heat-related illness.”(エアコンが熱中症を冷やして予防する最もよい方法)であるのは間違いない。
 さて、ブルームバーグ(7月13日付)は、“Heatstroke deaths quadruple as Japan shuns air conditioners to save power”(日本は節電のためにエアコンを止めて熱中症の死亡が4倍増)と報じた。

bloodbath

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 bloodは「血」で、bathは「入浴」。bloodbathは、文字通りは「血の入浴」。つまり、浴びるほどの血を流すことから、massacre(大虐殺)を意味する。経済に関して比喩的にも使われ、大量解雇や株式市場の暴落を指す。
 タイムズ・オブ・インディア(2011年8月8日付)は、“Syria bloodbath continues, 52 dead”(シリアの大虐殺は続く、52人が死亡)と報じた。シリアでは、今年3月以降、反政府抗議デモに対し公然と弾圧が始まった。アサド大統領は、“Syria is on the path to reforms.”(シリアは改革の途上にある)としながらも、デモの参加者を“terrorist groups”(テロリスト・グループ)と呼び、軍隊を出動させて武力で鎮圧し始めた。連日、多数の死傷者が出て当局の取り締まりは虐殺の様相を呈し、まさにbloodbathの事態となった。アラブ諸国に吹き荒れる反政府デモによる民主化革命は、多数の犠牲を強いることになった。
 ところで、最近注目を集めたのが世界同時株安によるmarket bloodbath。株式などが投げ売りされて相場が暴落、大量の損失(赤字)が出るのは、まさに経済的な意味でbloodbath。インターネットのビジネスニュースRTTNews(8月4日付)は、“Economic worries lead to bloodbath on Wall Street”(経済的懸念からウォール街は株が〝暴落〟)と報道。米株式市場でダウ工業株30種平均がこの日、500ポイント以上下げたことで、株式市場に悲観論が強まっていると指摘した。米国の不況と財政赤字の悪化が最大の不安材料。案の定、格付け会社のスタンダード&プアーズが、米国債の格付けを引き下げるに至って、週明け8日のダウ平均はさらに600ポイント以上下落。market bloodbathはアジア、欧州市場に波及した。
 さて、ウォールストリート・ジャーナル(8月9日付)のブログに“High frequency traders win in market bloodbath”(高頻度トレーダーは市場暴落でも勝ち残る)と出ていた。金融取引は今やコンピューターを使った秒単位の売買だが、はしこい奴は生き残る。人の行く裏に道あり花の山…。minagoro

chav 語源をご存知だったら脱帽です

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 カタカナ読みは「チャヴ」。英国の軽蔑語でlower-class(下層階級)に属するnon-educated delinquent(教育のない非行少年)を指す。語源研究者マイケル・クィニオン氏によると、「子供」を意味するジプシー語のchaviが語源。chavのファッションは、flashy gold jewelry(金ぴかのアクセサリー)、“prison white”(刑務所の白)と呼ばれる真っ白いトレーナー、野球帽、ブランド名の入ったスポーツ・ウェアやシューズなど。
 2011年8月の初めにロンドンを中心に英国各地で起きた若者の暴動。タイム誌(8月22日号)は、“An outbreak of arson, looting and lawlessness caught Britain and its leaders by surprise.” (放火、略奪そして無法状態の突発は、英国とそのリーダーたちを驚愕させた)と報じた。だが、同誌では触れられていないが、この暴動について英国民の間では、“Chav riots”(チャヴ暴動)とささやかれた。つまり、中心となって暴れ回ったのは下層階級の非行少年というわけ。
 著名歴史家のディビッド・スターキー氏は、8月12日のBBC2のニュースショウ番組で今回の暴動に触れて、“What has happened is that the substantial section of the 'chavs' have become black. The whites have become black.”(起こっているのは〝チャヴ〟の相当部分が黒人化していることだ。白人が黒人になっている)と述べ、ヒップホップなど黒人文化の浸透を指摘。“A particular sort of violent, destructive, nihilistic gangster culture has become the fashion.”(暴力的で、破壊的、ニヒルなギャング特有の文化が流行している)と語った。この発言に対して、「人種差別」との批判が多数寄せられたそうだが、それは一面において英国の金持ち保守層の〝本音〟を代弁しているようだ。
 保守党のデイビッド・キャメロン首相は、“This is criminality, pure and simple.”(これは、紛れもなく単純な犯罪だ)と述べ、警察官を大量動員して“street gang”(街のギャング)の鎮圧に踏み切った。英国社会は確かに病んでいる。

gloom

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 gloomは「暗がり」(darkness)、「薄暗がり」(dimness)、また精神的に「憂鬱な状態」(a state of melancholy)を指す。カタカナ読みは「グルーム」。景気の「先行き不透明」を表す言葉としてよく使われる。
 最近、頻繁に見かけるのがglobal gloom(地球規模の暗さ)。ウォールストリート・ジャーナル(2011年9月6日付)は、“Global gloom dents Asia shares”(世界経済の先行き不透明感からアジアの株式市場が下落)と報じた。dentは「ガツンとやってへこませる」。では、gloomの実態は何か?“Investors were unable to shake off worries about Europe's debt woes and the health of the U.S. economy.”(欧州の債務危機とアメリカ経済の状況について、投資家が懸念を払拭しきれなかった)ということ。景気は「気の持ちよう」とはよく言ったもので、worries(複数形、心配)が背後にある。
 また、ロスアンゼルス・タイムズ(2011年9月9日付)は、“Key member of Europe central bank quits, adding to economic gloom”(欧州中央銀行のキーマンが辞任、経済の先行き不透明に追い打ち)と報じた。ユルゲン・シュタルクECB専務理事が、イタリア、スペインの国債買い上げに反対して突如辞任。シュタルク氏はドイツ出身の主任エコノミストだっただけに、辞任は欧州債務危機の最後の砦の動揺を示唆。そのため、外国為替市場でユーロは売られ大きく値を崩した。
 さて、英国BBCは2011年9月4日、“Company profits defy economic gloom”(企業収益は経済の先行き不透明に挑戦する)とのレポートで、世界の経済ニュースに関して、“So it's all tales of doom and gloom, right?”(それでは、すべてお先真っ暗の話ばかりか、本当に?)と問いかけた。アップル社をはじめ、社会のニーズを先取りする企業は収益を上げているし、どんな環境でも生き残っていく企業はある。ことわざに言う。“The gloom of the world is but a shadow. Behind it, yet within our reach, is joy.”(世界の暗さは影に過ぎない。背後には、なお手の届くところに喜びがある)

secularism 

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 secularはラテン語が語源でworldly(現世の、世俗的)という意味。13世紀ごろ、キリスト教の教会と対立する概念として登場。その後、一般的に「非宗教的な」という意味で使うようになった。接尾辞の-ismを付けて、secularismは「世俗主義」と訳される。とくに、政治の世界では、宗教の介入を認めない政教分離の立場をいう。
 トルコのトゥデイズ・ザマン(2011年9月18日付)は“Secularism for Arabs and Turks”(アラブ人とトルコ人にとっての世俗主義)と題する社説で、“Will the Arab Spring countries embrace secularism as described by the Turkish prime minister?”(アラブの春を迎えた国々は、トルコ首相が説くような世俗主義を受け入れられるか? )と疑問を投げかけた。トルコはイスラム教徒が国民の9割以上を占めるが、共和国になって以来、世俗主義をとって来た。エルドアン首相は、チュニジアやエジプトをこのほど歴訪し、新政府が民主主義を推し進めるためには、世俗主義をとるべきだと主張した。“He attributes secularism to the state, not the individual.”(彼は、世俗主義を個人ではなく国家に帰属すると考える)。つまり、宗教については個人の自由意思に任せる一方、国家の運営は非宗教的であるべきだとした。
 バチカンのカトリック・ニュースサービス(2011年9月18日付)は、“Church and state: Why can’t they be friends?”(教会と国家:なぜ仲良くできないのか? )との記事を掲載。その中で、“Pope Benedict XVI has made the dangers of secularism a major theme of his pontificate.”(ローマ法王ベネディクト16世は、世俗主義の危険を任期中の最大のテーマにあげた)と述べた。欧米諸国では、“The separation of church and state, which is a hallmark of a democracy, has also gone onto the separation of God and life unfortunately.”(政教分離は民主主義の特質だが、さらに不幸にも神と生活の分離にまで至った)と指摘している。
 May God be with you! (神があなたとともにありますように)

prison overcrowding 社会の悪化を示す現象

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 overcrowdingは「過密状態」。overは「~過ぎる」でcrowdは「混雑する」という動詞。どこがそれほど込み合っているのかといえば、prisonあるいはjail、つまり「刑務所」。prison overcrowding(刑務所の過密)は今や〝熟語〟になりつつある。
 タイム誌(2011年9月29日付ウェブ版)は、“As California fights prison overcrowding, some see a golden opportunity”(カリフォルニア州は刑務所の過密と戦うが、これを絶好の機会とみる人もいる)と報じた。その中で、“The prison currently operates at 200% of its capacity; with less personal space among inmates, tensions rise, making life more dangerous for prisoners and guards alike.”(刑務所は現在、収容人員の2倍で運営されている。囚人間のスペースはより狭くなって緊張が高まり、囚人も監視人もともに命を脅かされる状態にある)と指摘。このため、州政府は囚人の教育プログラムを前倒しで行い、早期に社会復帰させる方針転換を迫られているという。これは、自由の身になりたい囚人には絶好の機会。だが、世間の風は意外に冷たく、刑務所に舞い戻る常習犯(recidivist)は後を絶たない。不況が深まる中で、米国各地のstate(州)prisonやcounty(郡)jailでovercrowdingが頭痛の種である。
 ところで、prison overcrowdingは、米国だけでなく世界各地でも問題になっている。シンガポールのストレーツ・タイムズ(2011年9月6日付)は、“1 dead, 2 wounded after prison riot in Thailand”(タイの刑務所暴動で1人死亡、2人負傷)と報じた。タイ南部のパッターニー県の刑務所で、“The prison has capacity for 900 inmates but has had more than 1,300 for many years.”(長年に渡り900人収容のところに1300以上の囚人がいる)とした上で、overcrowdingが原因で囚人同士の衝突を招いたと述べている。
“The degree of civilization in a society can be judged by entering its prisons”(社会の文明の度合は、そこの刑務所に入れば分かる)と指摘したのはロシアの文豪ドストエフスキーである。

downgrade 身から出たサビじゃないか?

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 downgradeは文字通り、grade(等級や評価)をdown(下げる)ことで、「格下げする」「評価を下げる」。最近は、credit rating(信用格付け)の格下げがもっぱら話題だ。downgradeの反対がupgrade。「アップグレード」とカタカナ読みすると、コンピューター・ソフトの更新でおなじみ。
 米サンフランシスコ・クロニクル(2011年10月24日付)は、“The scary truth about downgrades”(格下げの恐ろしい真実)と報じた。ここでdowngradesは、名詞の複数形であることに注意。その1つが、“This year, for the first time in its history, the United States had its AAA rating downgraded by S&P.”(今年、史上初めて米国債の格付けは、スタンダード・アンド・プアーズによってトリプルAから引き下げられた)ということ。その衝撃は大きく、一時は世界同時株安の様相を呈した。さらに米国以外にも、ギリシャ、アイルランド、スペイン、イタリアなど欧州諸国の格付けが相次いで引き下げられたというわけ。
 今や先進国であっても財政破綻の可能性が浮上し、downgradeの〝嵐〟が吹き荒れるようになった。その影響は甚大で、経済の先行き不安から株価は暴落、失業は増加、その結果、さらに景気が低迷するという悪循環。米ドル、ユーロが売られて安くなり、その反動で予想外の円高を招く。downgradesは、世界経済にとって何1つよいことはないが、これも各国の放漫財政のゆえで〝身から出たサビ〟というべきであろう。
 格下げされた国のトップは、必ずといってよいほど格付け会社を非難する。米CNNは9月21日、“Berlusconi blasts Italy downgrade”(ベルルスコーニ首相がイタリアの格下げに怒りを爆発させる)と報道。だが、この国家の一大事を前に、未成年女性の買春疑惑にまみれるベルルスコーニ氏に対して、イタリア国民や他の欧州諸国の不信感は高まっている。英フィナンシャル・タイムズ(10月24日付)は、“Berlusconi faces the ultimate downgrade”(ベルルスコーニ首相は、究極の格下げに直面している)と述べた。

about-face こういう英語が大切なんだ

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 about-face は、19世紀半ばに生まれた軍隊用語で、a turn of 180° from the position of attention(気を付けの位置から180度回ること)。すなわち「回れ右」。この場合のaboutは「~について」ではなく、in the opposite direction(反対の方向)を指し、faceは「顔」ではなく「顔を向ける」こと。about-faceは、実際の動作だけでなく、「突然の方向転換」の意味で使われる。
 ユーロ崩壊の危機に揺れる欧州で注目を集めたのが、“Greek about-face”(ギリシャの“回れ右”)。財政危機にあるギリシャのパパンドレウ前首相は、欧州各国から要求された緊縮政策について国民投票を行なうと発表。その後、金融市場は大荒れとなり、突如方針を転換して投票を断念。緊縮政策の受け入れと連立政権の成立とを引き換えに、本人は辞任した。カナダのモントリオール・ガゼット(2011年11月8日付)は、“Papandreou's about-face raises hopes for European crisis”(パパンドレウの方向転換は欧州危機に対して希望をわかせる)と報じ、市場はほっと一息ついた。
 さて、「アラブの春」の民主化運動が高まる中東で注目を集めるのが、トルコのabout-face。米クリスチャン・サイエンス・モニター(2011年11月3日付)は、“Turkey's bold about-face on Syria”(シリアに対するトルコの大胆な方向転換)と題する論文で、“Turkey’s bold backing of regime change in Syria – until recently a close friend – has caught many by surprise.” (トルコが、最近まで緊密な友人だったシリアでの政権交代を大胆に支持することは、多くの人々にとって思いも寄らぬことだった)と述べた。トルコはこれまでアサド政権と良好な関係を続けて来たが、今年1月にシリアで反政府デモが起こり、騒乱が東トルコの国境に及ぶに至って方向転換。アサド政権のデモ弾圧を非人道的な蛮行と非難し、反政府デモを支持するようになった。シリアの国際的な孤立は深まっており、国内は〝内戦状態〟の様相を呈し始めた。国際政治・経済のabout-faceは時に大事に発展するから要注意である。




covert war すぐに戦争したがるのは人間の悪い癖だ

Illustrated by Kazuhiro Kawakita



 covertは古仏語が起源で、本来の英語ではcovered(覆われた)という意味。ここでは、スパイ用語でcovert operations(秘密作戦)を指す。これは、ボブ・バートン著『最高機密:諜報と情報の辞典』によると、“Operations planned and executed so as to conceal the identity of, or permit plausible denial by, the sponsor.”(首謀者の正体を秘匿するか、口先の否定を許すように計画され、実行される作戦)をいう。そこで、covert warは「秘密作戦による戦争」。カタカナ読みは「コウヴァート(またはカヴァート)・ウォー」。
 英ガーディアン(2012年1月11日付)は、“This covert war on Iran is illegal and dangerous” (イランに対する隠密裏の戦争は非合法で危険だ)と報じた。“As another Iranian nuclear scientist is assassinated, the mystery thickens as to whether the Mossad, US or the UK are involved.” (もう1人のイランの核開発科学者が暗殺され、イスラエルの諜報機関モサドや米・英が関与しているか否かについて、謎は深まる)と指摘した。この事件は、バイクに乗った男が科学者の車に磁石付き爆弾を装着して爆殺したもの。2010年の1月と11月に続き3人目の核科学者の暗殺事件で、イラン側はイスラエルと米国を名指しで非難。当然ながら両者は関与を否定した。
 ところで、イランの核開発問題は中東情勢のカギを握る懸案であり、イスラエルは米国とともにイランへの軍事攻撃を検討してきたとされる。クリスチャン・サイエンス・モニター(2011年12月28日付)は、“An accelerating covert war with Iran: Could it spiral into military action?”(イランに対する隠密戦争の激化:軍事行動への急旋回の可能性はあるか)と警告。そうなれば、covert warではなくovert(諜報用語でopen=公然の)warとなり、取り返しのつかない事態へ突入する。
 イラン側のホルムズ海峡封鎖を威嚇する一方、米国による各国への経済制裁強化の呼び掛けで欧州連合(EU)がイラン産原油の禁輸を決定するなど―表の外交の世界でも事態は緊迫の度が深まっている。

toxic 人間をtoxicなんて呼ぶなよ!


I


 toxicの語源はギリシャ語のtoxikonで、毒矢の矢じりに塗る毒を指す。そこで、toxicは「有毒な」「有害な」という意味の形容詞。実際に毒物を含むtoxic chemicals(有毒化学物質)とかtoxic waste(有害廃棄物)などと使う。また、この言葉は比喩的にも使われる。
 米有力投資銀行ゴールドマン・サックスの業務執行役員グレッグ・スミス氏は辞職するに当たって、ニューヨーク・タイムズ(2012年3月14日付)のオピニオン面に、“Why I am leaving Goldman Sachs”(私がゴールドマン・サックスを去る理由)という一文を寄稿。その中で、“I can honestly say that the environment now is as toxic and destructive as I have ever seen it.”(正直言って、今の環境は私がこれまで見たことがないほど有害かつ破滅的である)と述べた。どういうことか?
 ゴールドマン・サックスの長年の成功を支えてきたのは企業文化であるとした上で、“It revolved around teamwork, integrity, a spirit of humility, and always doing right by our clients.”(それは、チームワーク、誠実さ、謙虚な精神、そしていつも顧客のために正しい仕事をすることを主軸にしてきた)と指摘。だが、今ではその文化を捨ててしまって〝金儲け主義〟に走り、顧客を食い物にするまでに堕落した、と批判している。
 さて、家庭問題で一番切実なのがtoxic parent(有害な親)。子供の気持ちを無視するだけでなく、言葉でいじめ、果ては暴行や性的虐待にまで及ぶような親を指す。ニューヨーク・タイムズ(2009年10月20日付)は、“When parents are too toxic to tolerate”(親が我慢できないほど有害になるとき)との精神医学者の論文を掲載。その中で、“It is no stretch to say that having a toxic parent may be harmful to a child’s brain, let alone his feelings.”(有害な親を持つことは、子供の感情はいうまでもなく、脳にまで害を及ぼすようだ、といって過言ではない)と述べている。虐待を受けた子供は生涯trauma(心的外傷)を背負わされるのだ。親の責任は重大である。

rewrite history 

Illustrated by Kazuhiro Kawakita



 rewriteは「書き直す」という動詞。rewrite historyは「歴史を書き直す」で、慣用表現ではないが、よい意味でも悪い意味でもよく使われる。記録を競うスポーツの世界では、「記録を塗りかえる」という意味になる。
 アルゼンチン出身で、スペインのサッカークラブ、バルセロナのFWリオネル・メッシ選手は3月20日、グラナダとのリーグ戦で同チームでの通算ゴールを234に伸ばし、クラブ史上最多得点記録を達成した。AFP通信(2012年3月21日付)は、“Messi hailed as ‘living legend’ after goal record”(メッシはゴール最多記録を達成後〝生きている伝説〟として迎えられる)との記事で、スペインの日刊紙バンガルディアが“Messi rewrites history”(メッシ、歴史を書きかえる)と報じた、と伝えた。
 さて、rewrite historyを政府が行う場合は、往々にして「歴史の改ざん」となる。インドのインディアン・エクスプレス(2012年4月7日付)は、“Bengal to rewrite history with ‘Left downfall’”(ベンガルでは〝左派の没落〟にともない歴史を書きかえ)と報道。西ベンガル州(州都コルカタ)では、2011年の州議会選挙でママタ・バナルジー女史が率いるトリナムール会議派が圧勝し、34年間続いた共産党政権が終わった。女史は州首相に就任、新政権では中学・高校レベルの歴史教育で、共産主義を提唱したドイツの思想家、マルクスとエンゲルスの項を縮小することを検討しているという。これに対して、インディア・トゥデー(4月9日付)は、“Trying to rewrite history for political purposes is certainly one of the most dangerous things a democratically elected government can do.”(政治的な目的のために歴史を書き直そうとすることは、民主的に選ばれた政府が行う最も危険な行為の一つであることは確かだ)と批判した。
 英国の歴史家、R・G・コリングウッドは、“Every new generation must rewrite history in its own way.”(どの新世代も自分流に歴史を書き直さねばならない)としているが、歴史家は新たな問題意識を持って歴史を再評価することが求められる。

anti-austerity 締め付けられるのは誰でもいやだ 

Illustrated by Kazuhiro Kawakita



 anti-は、カタカナ読みで「アンタイ」とか「アンティ」で、「反対の」という意味の接頭辞。austerityは形容詞austere(厳格な、耐乏の)の名詞形で「オーステリティ」。ここでは、政府の「緊縮財政」または「緊縮政策」を指す。そこで、anti-austerityは「緊縮政策反対」。
 AFP通信(2012年5月1日付)は、“May Day protesters have poured into streets across Europe, swept up in a wave of anti-austerity anger that threatens to topple leaders in Paris and Athens.”(メーデーの抗議デモ参加者がヨーロッパの街という街に流れ込み、緊縮政策に反対する怒りの声が席巻、パリやアテネの指導者らを転覆させかねない)と報じた。欧州のユーロ圏ではsovereign debt crisis(国家財政の破綻による債務不履行の危機)の回避のため、ギリシャをはじめ各国が緊縮政策に転じたが、景気が一段と低迷し失業率も上昇、anti-austerity protests(緊縮政策反対の抗議デモ)を引き起こす原因となった。
 このデモの影響は大きい。インターネットのニュースレター(同6日付)は、“François Hollande clubs Sarkozy in French election as anti-austerity sweeps Europe”(〝反緊縮〟が欧州を席巻、仏大統領選挙でフランソワ・オランドがサルコジをぶちのめす)と、緊縮政策を進めてきたサルコジ大統領の敗北を速報した。オランド氏は社会党の出身で、“austerity-sceptic”(緊縮政策に懐疑的)とされ、今後緊縮財政から景気刺激策へ舵を切ると見られる。英国のテレグラフ(同5日付)は、“The anti-austerity bandwagon will gain momentum if Francois Hollande is elected as president.”(フランソワ・オランドが大統領に選ばれたならば、〝反緊縮〟の流れに弾みがつくだろう)と予想。bandwagonは「楽隊車」で、jump on the bandwagonは「時流に乗る」という意味。
 だが、anti-austerityが、各国の経済政策の潮流となり、再び野放図な借金財政がまかり通れば、債務危機の再燃は必至だけに、金融市場は戦々恐々だ。




cyberweapon インターネットの戦争

Illustrated by Kazuhiro Kawakita



 cyber-は日本語でも「サイバー」、今では主にインターネットを意味する接頭辞。weaponは「兵器」だから、cyberweaponは「サイバー兵器」。computer virus (コンピューターウイルス)などネットを通じて侵入し被害をもたらすmalware(カタカナ読みで「マルウエア」、malicious softwareの略で、悪意のある不正ソフト)を指す。
 最近、注目を集めているのが、Flame(炎)と呼ばれるcyberweapon。ウォールストリート・ジャーナル(2012年5月29日付)は、“Advanced malware targets Middle East”(進化したマルウエアが中東を標的に)と報じた。この〝兵器〟の正式名称はWorm.Win32.Flame。中東諸国で相次いで発見され、ロシアのインターネット・セキュリティー会社カスペルスキーは、“the most sophisticated cyberweapon yet unleashed”(これまで放たれた最も精巧なサイバー兵器)と評した。
 ニューヨーク・タイムズ(同日付)は、“Iran confirms attack by virus that collects information”(イランが情報収集ウイルスの攻撃を確認)との記事で、Flameはデータを盗み出すspyware(スパイウエア)であると指摘。イランの核開発関連のコンピューターがcyberattack(サイバー攻撃)を受けたという。では、攻撃を仕掛けたのは何者か?
 イスラエルのヤアロン副首相はその後、軍のラジオ放送のインタビューで、“Anyone who sees the Iranian threat as a significant threat—it's reasonable that he will take various steps, including these, to harm it.”(イランの脅威を顕著な脅威とみなす者にとって、相手を攻撃するために、これら=ウイルスを含む様々な手段を講じるのは当然だ)と、関与をほのめかす発言をした。
 サイバー攻撃は、これまでハッカーによる個人の犯罪として問題視されてきたが、今や国家間や国家とテロ組織等とのcyberwarfare(サイバー戦争)にまで拡大しつつある。ネットの世界はますます危険な〝無法地帯〟となり、われわれもcyberweaponの流れ弾を食らいかねない。

swelter うだる暑さとは?

Illustrated by Kazuhiro Kawakita



 メリアム・ウエブスター辞典によると、to suffer, sweat, or be faint from heat(熱さに苦しみ、汗が出て、気が遠くなる)、あるいはto oppress with heat(熱さで押さえ付けられる)という動詞。つまり、swelterは「暑さでまいる」「うだるように暑い」と訳される。カタカナ読みは「スェルター」。
 欧米のメディアでもそれほど頻繁に使う言葉ではなかったが、2012年夏は溢れかえった。
 英国BBC(2012年7月3日付)は、“US storm-hit millions swelter in heatwave” (米国で暴風雨の被害にあった数百万人が熱波でまいる)と報じた。
 6月29日に東部地区を中心に暴風雨が襲って死傷者が出た上、数百万所帯が停電。その後首都ワシントンでも気温が40度を超え、各地で熱波が到来多くの人が熱中症で死亡したという。
 ワシントンポスト(7月4日付)は、“Shiver or swelter? The great debate between derecho hell and snowmageddon”、との記事を掲載した。この中で、derechoはスペイン語で、straight(真っ直ぐ)の意味で、ここでは雷雨をともなう激しい暴風雨をいう。Snowmageddonは、snow(雪)とArmageddon(ハルマゲドン)を組み合わせた造語で、「究極の豪雪」とでも言おうか。2009年ごろからheavy snowfall(どか雪)を表すのに使われ出した。そこで、「震えるのか、うだるのか?〝暴風雨の地獄〟と〝この世の終わりの豪雪〟とどちらがましか、大議論」というわけ。
 最近の暴風雨も熱波も豪雪も〝極端〟な事態になることがしばしば。どちらも身近に体験したメリーランド州の住民は、“Both heat and cold. Both are bad. It’s equal-opportunity badness.”(熱も寒さも、どちらも悪い。どちらも等しく悪い機会だ)と答えているのは、もっともである。
 だが、“Pride and Prejudice”(自負と偏見)を書いた英国の女流作家ジェーン・オースティンはこう言ったそうだ。“What dreadful hot weather we have!  It keeps me in a continual state of inelegance.”(何と恐ろしいほど暑い天気。このせいで、私はずっとみっともない状態のまま)

streaking 発祥はイギリスで命名はアメリカだ




 streakerの元の語はstreak。strike(ストライク、打つ)、stroke(ストローク、ひと打ち)と同じ語源で、筆でさっと描いた「線」を指す。転じて「稲妻」、動詞として「疾走する」、さらに公共の場を裸で駆けるストリーキング(streaking)に発展。streakerはstreakingをする人。
 2012年ロンドン五輪で、関係者が神経をとがらせる一方、メディアが密かに面白がっていたのがstreaking。
 英テレグラフ(2012年7月10日付)は、“London 2012 Olympics torch upstaged by streaker”(ロンドン2012年オリンピックの聖火はストリーカーに人気をさらわれる)と報じた。五輪の聖火リレーがロンドン西方のヘンリー・オン・テームズにさしかかったところ、その前方を造り物のトーチを掲げ、裸の背中に“Free Tibet” (チベットを解放せよ)と書いた男性のストリーカーが走り抜けて、公然わいせつ罪で逮捕された。
 ロンドンのイブニング・スタンダード(7月12日付)は、“The world deserves to see Britain's Olympic streak”(世界は英国五輪でストリーキングを見て当然)との記事を掲載。その中で、“An act that was first recorded in London in 1799, and named in the US in 1973, had gone global.”(1799年にロンドンで初めて記録され、1973年に米国でストリーキングと名付けられた行為は、世界に広まった)と解説している。英国が本家本元というわけだが、その中でもとりわけ有名なのは、この人。“Father-of-three Mark Roberts has streaked more than 500 times since 1993.”(子供3人の父親、マーク・ロバーツ氏は1993年以来500回以上ストリーキングを行って来た)。世界中の国際的なスポーツ大会に〝出場〟し、ギネスブックにもその名を連ねている。
 もっとも、ウェールズ・オンラインでは、五輪の注意事項に“STREAKERS BEWARE”(ストリーカー注意)として、ストリーキングは伝統とはいえ、面白がってやると最大2万ポンドの罰金が課せられる、と警告している。

anti-bullying いじめっ子はどこにでもいる

Illustrated by Kazuhiro Kawakita



 anti-は「反~」「対~」という接頭辞で、bullyingは「いじめ」。anti-bullyingは「いじめに反対する」「いじめ対策の」という意味。ここで問題になるのはschool bullying(学校でのいじめ)で、今や世界各国で学校教育の重要問題になっており、anti-bullying program(いじめ対策プログラム)や anti-bullying legislation(いじめ対策の法律制定)が進められている。
 米教育省は2012年8月6、7の両日、首都ワシントンでBullying Prevention Summit(いじめ防止サミット)を開催された。今年で3回目。記者発表によると、“The summit will focus on ensuring that anti-bullying efforts are coordinated and based on the best available research.”(サミットの焦点は、いじめ対策への取組みの様々な努力が、最善の研究成果に基づいて一元化して行われているか、を確かめることだ)。とくに、“Panels will highlight the connection between bullying and suicide.”(討論会では、いじめと自殺の関係にとくに留意していく)。
 米国では、1990年代から学校でのいじめによる自殺が問題になり、21世紀に入ってbully(いじめ)とsuicide(自殺)を組み合わせたbullycide(いじめ自殺)という新語が登場。1999年にジョージア州を皮切りに、これまでモンタナ州を除く49州でschool anti-bullying legislation(学校でのいじめ対策法の制定)が行われた。
 米国でのいじめは人種差別や、同性愛などの性的差別によるものが顕著だが、“Bullying is a common occurrence in most schools.”(いじめはほとんどの学校で共通の現象)とされる。
 一方、カナダのCBCニュース(2012年7月14日付)は、“Anti-bullying legislation step in right direction, advocates say”(いじめ対策法の制定は正しい方向、と支持者はいう)と報道。
 カナダでも、小学校4~6年生の10人に1人が他の生徒をいじめているとされる一方、4人に1人がいじめられているとの調査があり、学校と行政当局がいじめ防止法の制定に動き出している。

2013年4月17日水曜日

chillax こんな単語を知ってる?



 chillaxは、メリアム・ウェブスター(オンライン版)によると、chill(冷やす)とrelax(リラックスする)を合成した単語。初出は1999年という。カタカナ読みは「チラックス」。
 chillは、冷やして熱を奪うという意味。仕事のことで頭がいっぱいで熱くなっているのが冷めると、chill out(冷静になる、くつろぐ)。一方、relaxの語源はラテン語で、re-は「離れる」という意味の接頭辞、laxは「緩む」こと。仕事の緊張感から解放されると、ほっとする。そこで、chillaxはrelaxをより強調する言葉といえる。
 英国のテレグラフ(2012年5月19日付)は、“David Cameron: how karaoke and tennis make PM a 'chillaxing champ'”(デービッド・キャメロン首相:いかにしてカラオケとテニスで〝くつろぎのチャンピオン〟になるか)との記事を載せた。近刊の伝記で、キャメロン氏が首相であるプレッシャーから逃れるために、カラオケやテニスをやるほか、日曜日の昼食にはグラスに3、4杯のワインを楽しむ、というストレス解消法を紹介している。自身がインタビューで、“If there was an Olympic gold medal for ‘chillaxing,’”(オリンピックに〝くつろぎ(という競技)の金メダル〟があったら)と語り、“the Prime Minister would win it.”(首相はそれを勝ち取るだろう)と結ぶ。
 “He considers the job of Prime Minister, with its requirements to be on duty seven days a week, to be an enormous privilege.”(彼は、首相の仕事は週に7日の勤務を要求され、大変な特権であると考えている)が、それだけにストレス解消にも並外れた〝力量〟が求められるようだ。
 ところで、chillには「ぞくっとする」など、冷たく感じるというニュアンスがある。ランダムハウス米俗語歴史事典によると、Black English(黒人英語)では1980年代から、chillがcool(クール、涼しい)の 同義語として使われている。chill outも「くつろぐ」の意味で頻繁に登場する。
 ストレス多い社会に生きる皆さん、いかにchillaxするかが工夫のしどころでしょう。


2013年4月16日火曜日

global tax 税金から逃れるすべはない

Illustrated by Kazuhiro Kawakita



 global(グローバル)は「地球規模の」で、taxは「税金」。global taxは「地球規模の税金」。United Nations(国際連合)が創設を検討しているもので、UN global tax あるいはworld tax(世界税)の呼称でメディアに報じられるようになった。
 米地方紙デザレット・ニュース(2012年2月3日付)は、“U.N. leaders consider world tax to fund social protection, services” (国連の指導者らは、社会的な保護・サービスの財源のために世界税を検討している)と報じた。国連の社会開発委員会のフォーラムにおいて、“Everyone should be able to access at least basic health services, primary education, housing, water, sanitation and other essential services.”(どの人も、少なくとも基本的な医療、初等教育、住宅、飲料水、衛生、その他の基本的なサービスを受けられるようにすべきである)という趣旨で、0.005%のfinancial transaction tax(金融取引税)の創設が提言された。つまり、世界の経済危機の源であり、あぶく銭があふれる金融市場に狙いを付けたわけ。
 この税金は、米ノーベル賞経済学者のジェームズ・トービンが1972年に外国為替市場の投機抑制策として提唱したcurrency transaction tax(通貨取引税)に起源を持ち、世界の貧困撲滅に役立てようというもの。しかし、最大の問題は、徴収漏れがないように世界各国が協調し、global revenue service(グローバル歳入庁)のようなworld taxation system(世界的徴税システム)を創設しなければならない点であると指摘されている。
 ところで、フォックス・ニュース(2010年5月10日付)は、“World Health Organization moving ahead on billions in internet and other taxes”(世界保健機関はインターネットなどへ数十億ドルの課税を目指す)と報じていた。それによると、世界的な感染症の研究や、貧しい国への医薬品供給のため、インターネットの活動や取引にglobal consumer taxes(グローバル消費者税)への課税を検討しているという。
 国連の役人が当てにするのも、税金である。

2013年4月13日土曜日

doodle 落書きする

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 doodleのカタカナ読みは「ドゥードゥル」で、オックスフォード英語辞典(ODE)にはscribble absent-mindedly(うわの空で書く)と定義されている。日本語では「いたずら書きをする」「落書きする」などと訳される。また、いたずら書きをする人をdoodlerという。
 インターネットの大手検索エンジンのグーグルはこのほど、doodlerを募集する広告を出した。“Every day, hundreds of millions of online users visit the Google homepage.”(毎日、何億人ものオンライン・ユーザーがグーグルのホームページを訪れる)という状況で、ユーザーに強い印象を与えるイラストやグラフィックデザインでGoogleのロゴマークを装飾するのが仕事になるという。要求されるのは、”Freehand illustration skills and a wide range of artistic styles.”(手描きのイラスト技術と幅広い芸術的スタイル)というから、アートないたずら書きが求められるようだ。
 今やCG(コンピューターグラフィックス)技術の進化によって、どんな映像でも人工的に作り出せる時代である。ネットの世界では絵の上手さよりも、発想のユニークさ、豊かさが重視され始めた。そこでdoodleに目が向けられたというわけ。
 米CNN(2012年4月11日付)は、“A game that brings your drawings to life”(あなたの描いた絵に生命を与えるゲーム)をリポート。あるオンラインゲームでは、ユーザーの描いたキャラクターをスキャンして、それを画面上で動画に変える試みが始まっているという。“Endless days of doodling during class led to the inspiration of game.”(毎日の授業の間のいたずら書きがゲームの発想につながった)そうだ。
 授業中にいたずら書きをするとは何事だ、との批判もあるが、タイム誌(2009年2月26日付)は、“Study: Doodling helps you pay attention”(研究によると、いたずら書きが注意を喚起するのに役立つ)と報じた。“When you doodle, you don’t daydream.”(いたずら書きをするときは、夢うつつにはならない)から。


2013年4月11日木曜日

slut 「あばずれ」ってこういうことなの?


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 カタカナ読みは「スラット」。語源は15世紀初頭にさかのぼり、「だらしのない女」としてkitchen maid(台所の下働き)を指した。転じて、「売春婦」とか「あばずれ」などの蔑称となった。ところが、最近では、“Slutwalk”(スラットウォーク)など女性の抗議デモの標語に登場、より積極的な意味で使われている。形容詞はslutty。
 カナダのグローブ・アンド・メール(2012年5月25日付)は、“Hundreds march in Toronto Slutwalk to combat sexual violence”(性暴力と戦うため、数百人がトロント市で〝スラットウォーク〟の行進)と報じた。同市でSlutwalkが始まったのは昨年4月。女性への性暴力の対策を議論する集会で、“Women should avoid dressing like sluts in order not to be victimized.”(女性は被害に遭わないために、〝あばずれ〟のような格好を避けるべきだ)と、警察関係者が発言したのがきっかけ。性的暴行の被害に遭うのは、被害者側に原因があるとする見解に反発する形で運動がスタートした。“No matter what I wear, my body is not an insult.” (たとえ私がどんな服装をしようと、私の身体は侮辱の原因ではない)と主張する。
 この運動はカナダから世界各国に拡大。ブラジルでは妊娠中絶の解禁など、各国が抱える女性問題を抱き合わせたフェミニズム運動に発展した。主催者側は、Tシャツにジーンズなどの普段着でのデモを奨励しているが、ビキニや超ミニスカートを着けた挑発的な姿の参加者もあり物議を醸した。
 ニューヨーク・ポスト(2012年6月6日付)によると、ニューヨーク市のトップ公立高校でその日、“Slutty Wednesday”(スラッティな水曜日)と称し、生徒約100人が学校の服装規定に抗議してデモを行なった。校則では、女生徒に対して肩や腹部、背中を出すなど肌の露出が多い服装を禁じているが、「学校は勉強するところで、服装は重要ではない」と反発しているのだ。
 これから夏にかけては気温上昇とともにsluttyな女性が増えるが、男は見ないようにするしかないか…。

2013年4月8日月曜日

tweetup tweetプラスmeet up 出逢いを大切に

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 tweetは、鳥が「さえずる」ことだが、最近ではこの意味で使われることは少ない。むしろ、to post a message on Twitter(〝ツイッター〟のオンライン・サービスにメッセージを掲示する)の意味で使うのが圧倒的。tweetupは派生語で、tweetとmeet up(出会う)が合成した言葉。ツイッターを通じて知り合った人たちが、実際に会うことを指す。カタカナ読みは「ツィータップ」。
 インドのインディアン・エックスプレス(2012年5月14日付)に、“Let’s Tweet and Meet”(ツイッターをやって、出会おう)との記事が載った。ムンバイ市で、葉巻を楽しむシガー・クラブを立ち上げた人が、ツイッターで人集めに成功したというエピソードを紹介。“Twitter has helped me get in touch with a lot of like-minded people.”(ツイッターの助けで、同好の人々とコンタクトを取ることができた)と述べている。
 経済発展が著しいインドは今や世界で6番目のツイッターの使用国であるという。そこで、“Many brands are recognizing this and creating the unique tweetup to cater to their target audience.”(多くの商業ブランドがこの事実を認めて、彼らのターゲットとする顧客に提供するためのユニークなツイッターによる出会いの場を立ち上げつつある)という。
 tweetupは米国の大統領官邸ホワイトハウスでも始まった。“White House Tweetups”というホームページが設けられ、“A Tweetup is an in-person meeting of people who use social media to engage with the White House on Twitter.”(Tweetupは、ツイッター上のホワイトハウスとソーシャル・メディアを使ってコンタクトする人たちが直に会う会合です)と説明。今年(2013年)も去る4月1日に行われた復活祭のイベントへの参加を呼びかけた。その結果、選ばれた数千人の子供たちがホワイトハウスの庭でEaster Egg Roll(イースターの卵転がし)の行事を楽しんだという。
 “Birds of a feather flock together”(類は友を呼ぶ)と、ことわざにある通りではないか。




2013年4月7日日曜日

gender-bending ニューハーフは和製英語

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 genderは「性」。bendは「曲げる」と言う動詞。語の起源は1980年代に生まれたgender-benderで、文字通りでは「性を曲げる人」だが、“a person who dresses and behaves like a member of the opposite sex”(異性の格好をしたり、そのように振る舞う人)の意味。形容詞がgender-bendingで、性差がわかりにくくなる意味にも使う。
 AP通信(2012年2月10日付)は、“Gender bending model still causing a stir”(異性装のモデルが依然〝興奮〟のタネ)と報じた。世界のファッション界で注目を集めるボスニア生まれのオーストラリア人、アンドレイ・ペジック。その容貌は美しい女性モデルだが、実はれっきとした男性。しかも、男性モデルもやれるというから、まさにsupermodelと呼ばれるにふさわしい。記事では、“His androgynous beauty has turned him into a trendsetter in an industry.” (その両性具有的な美が彼を業界の流行発信者に変えた)と述べ、2011年の1年間で14の雑誌の表紙を飾ったという。
 異性の服装をするという動詞はcross-dress。大昔から祭礼や芸能をはじめcross-dressingは盛んに行われて来たが、最近では迫真のリアリティが追及されるようだ。また、habitual cross-dresser(いつも異性の格好をしている人)や性転換手術をした人などのtransgender person(性差を越える人)も目新しいことではなくなってきた。日本でいう「ニューハーフ」はshemaleという。
 だが、新たな問題としてニューヨーク・ポスト(2010年11月27日付)は、 “Gender-bending athletics”(性差が分かりにくくなる運動競技)とのコラムを掲載した。ある大学の女子バスケットボールチームの女性選手がtransgender personとして、自分は「男性」であると宣言。そこで、この人は女性か男性か、となったわけ。NCAA(全米大学体育協会)は、選手のsexual reassignment surgery(性別適合手術)やホルモン療法を禁じているため、この人はそれらを控えているという。だが、人権尊重の立場からtransgender の人々への差別を禁じる州もあり、今後のスポーツ界に波紋を呼んでいる。

2013年4月3日水曜日

naïve 天然だ!

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 naïveは日本語でも「ナイーヴ」。古仏語のnaïf(自然のまま、生まれつきの)が語源。“Lacking worldly experience and understanding”(世間的な経験や理解に欠ける)という意味で、同義語はsimple(単純)、innocent(無邪気な)、unsophisticated(世間ずれしてない)。だが、しばしばstupid(バカ)の婉曲表現として使われる。
 ブッシュ政権で副大統領を務めたディック・チェイニー氏が2011年8月30日に回顧録“In My Time”を出版。クリスチャン・サイエンスモニター(同日付)によると、“In the book, Cheney argues former Secretary of State Rice was naïve for trying to reach a nuclear weapons agreement with North Korea.”(その本の中で、チェイニー氏は、ライス前国務長官が北朝鮮と核兵器協定を結ぼうとしたのは〝天真爛漫〟だ、と皮肉った)という。
 ライス氏はこれに対し、"I don't appreciate the attack on my integrity that that implies."(暗にほのめかすような私への人格攻撃は評価しない)と反論した。integrityは、日本語に訳しにくい単語の1つ。語源はinteger(整数)と同じでwholeness(全体性)を指す。転じてsoundness of moral character(道徳的な高潔さ)、honesty(正直さ)をいう。ここでは、「人をバカにするのは許さないわ」というのを婉曲に言ったわけ。
 さて、英国のスカイ・ニュース(2011年9月1日付)によると、野党労働党のエド・ミリバンド党首はインタビューで、“The Government is ‘naïve’ to think the UK is safe from the problems facing the global economy.”(政府が、グローバル経済が直面する数々の問題から英国が安全であると考えているとすれば〝おめでたい〟)とキャメロン政権を批判。"Collective austerity, advocated by the UK Government, is too simplistic for the complex challenges the world faces." (世界が直面する複雑な課題に対して、英国政府が掲げる総合的緊縮政策は単純すぎる)と指摘した。simplisticもnaïveの同義語で、裏を返せば「単純バカ」と非難したことになる。

2013年3月29日金曜日

phantom vibration 心はいつも着信を待っている




 phantomは「幽霊」または「幻想」「幻覚」。一方、vibration(バイブレーション)は、cell phone's vibration、すなわちケータイを〝マナーモード〟(英語ではvibration alert=振動報知)にしたときに着信を知らせる振動のこと。そこで、phantom vibrationは、「振動の幻覚」。着信がないのにケータイが振動したように錯覚すること。
 オーストラリアのシドニー・モーニング・ヘラルド(2012年2月9日付)は、“‘Phantom’ mobile phone vibrations: why we get them”(ケータイの振動の幻覚、なぜわれわれは感じるのか)との解説記事を載せた。“Bzzt, bzzt. You check the supposed vibration in your pocket, yet no one has called or sent you an SMS.”(ブー、ブー。あなたはポケットで振動したのかと確かめてみるが、誰も電話をしていないしSMSも送っていない)ということがある。SMSはShort Message Service、つまりメールのこと。こうした現象を少なくとも6割以上のケータイユーザーが経験しており、 “phantom vibration syndrome”(幻覚振動症候群)などと呼ばれているという。
 かつて、着信メロディがなかったころ、ケータイが鳴ってないのに、鳴ったように錯覚するphantom ringingが問題になった。人混みなどで一般的な着信音を聞くと、つい自分のケータイに手が行った。最近は、他人の迷惑を考えてマナーモードにすることが増えているので、ポケットのケータイがちょっと動いてもビクリとするのだ。
 なぜ、こんなことが起こるのか?
 現象が問題になり始めた当初のUSA Today(2007年6月12日付)は、“Good vibrations? Bad? None at all?”(よい振動か、悪い振動か、または振動は全くないのか)との記事を掲載。ケータイ会社は、勝手にケータイが振動することはない、とした上で、“Perhaps in the mind of the cellphone user only.” (たぶんケータイユーザーの心の中だけ)で感じられるのだろうと指摘した。
 ケータイを手放せなくなった今、心はいつも着信を待ち構えている…。

2013年3月25日月曜日

bullycide



 bullyは「いじめ」。cideは「殺人」を意味する連結形だが、suicide(自殺)を指す。bullycideはズバリ「いじめ自殺」。子供たちが学校でいじめられた末に自殺すること。
  Neil MarrとTim Fieldの2人の著者が3年間に渡って調査を行い、2001年に”Bullycide: Death
At Playtime”(いじめ自殺:遊び時間の死)を出版した。その中で、いじめで犠牲者が死に至るケースをbullycideと定義したことに始まるが、そのほとんどが自殺であることから「いじめ自殺」。
 米国のChristopher Burgess氏は、“Bullying: The 34 we lost in 2010 to Bullycide”(いじめ、2010年にわれわれは34人をいじめ自殺で失った)と米国の事情を報告している。
 その中で、“Bully, Bullying, Cyberbullying, and Bullycide – These four words continue to appear with ever greater frequency in the lexicon of the modern American family.”(いじめ、いじめること、インターネットのいじめ、そしていじめ自殺、この4つの言葉が現代のアメリカの家庭で非常に頻繁に使われる言葉になってしまった)と述べている。その悲惨な現実は日本と変わらない。そして、保護者や教師が抱える重い課題であることも。
 最近では、さらにallergy bullying(アレルギーいじめ)という言葉も出てきた。
 “Intimidating a person, particularly a schoolmate, by threatening exposure to a food that the person is allergic to”(食物アレルギーを持つ人、とくに学校のクラスメイトに対して、その食物にさらすように脅して怖がらせる)ことを意味している。
 CNN(2013年1月7日)は、“Allergy bullying: When food is a weapon”(アレルギーいじめ:食物が凶器となるとき)と報じた。Owen Kellog君は7歳でピーナッツのアレルギーがあるが、ある日泣いて家に帰ってきた。というのも、別の生徒がOwen君にピーナッツを食べさせようとしたからだった。食物アレルギーの子供は、アレルギーのある食物を食べたら死ぬ場合がるので、こうしたいじめは殺人に至るものだ。学校の安全をどうして確保するのか、厳しい事態に直面している。
 

2013年3月21日木曜日

woot or w00t



 wootはカタカナ読みで「ウート」。物事に成功したり、勝利したときの“a small cry of joy” (小さな歓声)を表現する新語である。日本語でいうと「やったあ!」。
 “Woot! Woot! Electrifying win!” (やったあ、やったあ。電撃的勝利だ)とか“Woot! We did it! Fantastic!”(やったあ。おれたちはやった。すばらしい)など、ツイッターやブログに頻出するが、最近は一般のメディアでも見られる。
 この言葉が使われるようになったのは1990年代。2007年にメリアム・ウェブスターの“Word of the Year”に選ばれたほか、2011年にオックスフォード英語辞典(OED)に登録された。
 だが、語源には諸説がある。語源研究者のマイケル・キニオン氏によると、世界中で楽しまれている米国発のファンタジーゲーム、「ダンジョンズ&ドラゴンズ」のプレイヤーが宝物を見つけたときに上げる喜びの声、“Wow! Loot!”(わあ、戦利品だ)から来たという説がある。よく似た説では、ハッカーがコンピューターシステムに侵入し、“root”(ルートソース)までアクセスに成功したときに、“Woot, I have root!”(やったあ。ルートをつかんだ)といったのが始まりという。
 インターネット上では、この語の綴り字のwとtの間の2つのoを数字の0に変えてw00tとしている場合がある。これなどはキーボード(0はoの右斜め上にある)上の打ち間違えや遊び心を思わせるだけに、ネット起源は有力であろう。
 一方、ウェブスターの注では“We Owned the Other Team.”(われわれは相手方に勝った)という大文字の部分をつなげた言葉であるともいう。こうした略号は、ネットやケータイのテキスト語法で急増している。たとえば、LOL(laughing out loud=大声で笑う)は日本の「(笑)」に当たり、今では世界中に普及、辞書にも登録されている。
 ところで、歓声を表す一般的な英語はhurrahとかhurray(日本語ではフレー)。「わーっ」という歓声にふさわしい響きがあるように思うが、wootはいかがなものであろうか。