2012年11月13日火曜日

stunt 映画だけではない。political stuntも・・・

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 stuntは映画のスタントマンの「スタント」に当たり、「離れ業」「妙技」を意味する名詞。子供たちの間でよく「こんなことできるかい?」といって、とんぼ返りをやったりする。あれがstunt。自分の力や技を他人に見せつけて挑発する意味合いがある。語源は分らないが、アメリカを肌で実感することができる言葉であろう。
 映画のstuntに戻ると、俳優の身代わりになって肉体的に困難な業や危険をともなう行為をするstunt doubleは、アクション映画の撮影に欠かせない。ハリウッドでは、悪魔の島から脱獄する「パピヨン」(1973年)で主役のスティーブ・マックイーンの代わりに断崖から海に飛び込むシーンを撮ったのが、最初の大掛かりなstuntであるという。
 stuntをする男性はstuntmanであり、女性はstuntwomanだが、最近はgender sensitive(性差別に敏感)な世の中なので、stunt performerというのがよいだろう。もっとも、ジャッキー・チェンのようにstunt performerを使わず、自分でstuntを演じることにこだわるアクション俳優もいる。“A lot of people ask me when I do a stunt, are you scared? Of course I’m scared. I’m not Superman.”(多くの人が俺にスタントをするとき怖くないかと尋ねるが、もちろん怖いさ。俺はスーパーマンじゃないからね)と彼は語っているが、最近のハリウッドはComputer Generated Imagery(CGI)が大流行だけに、彼でさえstuntの機会は減ったという。
 さて、まったく衰えを知らないのはpolitical stunt(政治的人気取り)。米国で政治はdog-and-pony show(サーカス)だと言われ、メディアが発達するに従って、年々その傾向は強まっている。サーカスにstuntは付きものだが、米国政治もstuntなくして語れない。
たとえば、2006年7月末にイラク北部に住むクルドの役人が訪米し、サンフランシスコなどで「サダム・フセイン(元イラク大統領)を倒してくれてありがとう」というキャンペーンを展開した。その模様はコマーシャルとして全米でテレビ放映されたが、クルドの子供たちが星条旗の小旗を振り、「アメリカよ、ありがとう」「民主主義をありがとう」と歓声を上げていた。実は、これには共和党関係のPR会社が関わっていたという。
 political stuntは、選挙の年にはさらに激しさを増す。ニューヨーク・タイムズ(6月9日付)の社説は、“election-year stunt”という言葉を使ったが、2012年の大統領選挙前も嫌と言うほどとpolitical stuntを見せつけられ、有権者はあきれたろう。
 第32代大統領のフランクリン・ルーズベルトは、有権者をこう戒めている。“In politics, nothing happens by accident. If it happens, you can bet it was planned that way.”(政治上の出来事は何1つ偶然ではない。もし、何かが起れば、それは必ず仕組まれたものと考えられる)The Sankei Shimbun(september 3 2006)

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