2012年10月2日火曜日

autism

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 autismは日本では「自閉症」と訳されている。カタカナ読みは「オーティズム」。
この言葉が最近、米メディアに頻繁に登場するようになった。その背景には患者の増加がある。米疾病対策センター(CDC)の調査によると、新生児の166人中1人に自閉症が見つかるという。この割合は10年前の2倍、25年前の10倍に上ると推定されるから、驚くべきことだ。
 autismは先天的な脳機能障害が主原因で、視覚的な認知能力や言語能力の発達が遅れる発達障害だ。3歳ごろまでに現れ、▽物事への関心が限定され同一行動を繰り返す▽対人関係でコミュニケーションができない▽言葉で自分の意思を表現できない-などの症状が特徴。現代医学では根本的な治療法はないとされ、社会適応するための技能トレーニングが行われている。
 autismの語源はドイツ語のAutismus。ギリシャ語のautos-(自己)と-ismos(状態)を組み合わせた造語で、スイスの精神科医、オイゲン・ブロイラーが「統合失調症患者が他人とコミュニケーションができない症状」を記述するために、1912年に用いた。「自閉症」はこのドイツ語の訳語だが、原語には本来「閉」の意味はない。だが、日本では「自閉」のイメージが一人歩きし、「ひきこもり」や「鬱状態」などと混同され、さまざまな誤解を招いている。
 現在、医学用語として用いられるautismは、1943年に米ジョンズ・ホプキンス病院のレオ・カナー博士が、11人の小児に共通の「他人とコミュニケーションができない症状」を発見したことに始まる。カナー博士は当時、「refrigerator moms(冷蔵庫ママ=子供に冷たい母親)に責任がある」として母親の愛情不足を原因に挙げた。
 しかし、母親の愛情不足説は1960年代に覆され、現在の脳機能障害説への道を開くことになる。その契機となったのが、精神測定学者ベルナール・リムランド博士の研究。ニューヨーク・タイムズ(2006年11月28日付)によると、リムランド博士は自分の息子がautismと診断され、担当の医師から親の愛情不足を責められたのに反発。自ら原因究明に乗り出し、ついに「研究の方向を親から脳に転換する重要な役割を果たした」。
 タイム誌は2006年5月29日号でautismを特集。最近の患者急増について「理由はまったく分からない」としながらも、「早期診断を促進する保健キャンペーンによって、一般の意識が高まっており、昔に比べて多くの子供たちが診断を受けるようになり、患者の掘り起しが進んでいる結果ではないか」と指摘。その一方で、「環境的要因があるのかもしれない」とも述べている。
ただ、疫学研究者の間では、autismの診断基準が現在のように拡大したことが、患者認定急増の大きな要因だとの指摘がある。「自閉症」という日本語訳もこの辺で見直す必要があるだろう。The Sankei Simbun(December 17 2006)

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