2012年3月11日日曜日

capitulation



カタカナ読みは「キャピチュレーション」。16世紀からある古い言葉で、元は「合意文書」のこと。後に、合意は合意でも、服従、降伏文書の合意を意味するようになり、軍事用語として「降伏」そのものを指す。
ニューヨークタイムズ(2008年7月10日付)は、“Senate Approves Bill to Broaden Wiretap Powers”(上院が米政府の盗聴力増強の法案に同意)と報じた。法案は10日、ブッシュ大統領が署名し成立。これは、2001年の9・11中枢同時テロ以降、大統領権限でNSA(国家安全保障局)に対して、裁判所の令状なしで一般市民や外国人の電話などの盗聴を許可してきた〝既成事実〟を、改めて「外国情報監視法」の改正案として提出したものである。2005年末に盗聴の事実が明るみに出て、協力した電話会社に訴訟が殺到。今回の改正案は、電話会社への免責を与える条項を盛り込んだ点がミソだが、同時に、ほとんど無制限に盗聴できる権限を政府に与えている。
上院の投票結果は69対28の圧倒的多数で可決。これは、令状なしの盗聴行為を人権侵害と訴えてきた民主党議員の多くが賛成に回ったためで、その中には、直前まで反対していたバラック・オバマ氏(当時は上院議員)も含まれた。
この結果について、民主党のラッセル・ファインゴールド上院議員は、“This bill is not a compromise. It is a capitulation.”(この法案は妥協ではない。屈服だ)として、民主党の最も重要な主張を放棄したと批判した。 “This is one of the greatest intrusions, potentially, on the rights of Americans protected under the Fourth Amendment of the US Constitution in the history of our country.”(わが国の歴史上、憲法修正第4条=プライバシーの保障=で守られた米国民の権利に対する最大の侵害の1つになる)と、同議員は警告している。
さて、capitulationは株式市場では、安全を求めて市場から抜け出すため、前に得た利益まで放棄し、保有株を〝投売り〟することを指す。いわゆる“panic selling”(パニック売り)。民主党の“capitulation”について、“It’s presidential election-year cowardice. The Democrats are afraid of looking weak on national security.”(大統領選挙の年のビビリ。民主党は国家安全保障で弱腰と見られるのを恐れている)との分析があり、選挙を目前にした〝パニック売り〟ともいえる。共和党大統領候補のジョン・マケイン上院議員は、オバマ氏を“flip-flopper”(変節漢)と皮肉った。
建国の父であるベンジャミン・フランクリンはこう言っている。“The man who trades freedom for security does not deserve nor will he ever receive either.”(安全保障のために自由を売り渡す者は、そのいずれにも値せず、どちらも得られない)。The Sankei Shimbun (July 27 2008)

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